早稲田日本語教育実践研究 第11号
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サークル活動やインターンシップ等にも参加し,多くの日本人と積極的に交流し,日本文化へ溶け込んで欲しい。それを通じてジャパニーズシンキング(例:「ほう・れん・そう」の考え方,時間厳守の意識等)や日本語の「伝え方」を身に着けてもらいたい。4-2.就職活動における提言留学生だけではないが,低学年から積極的にキャリア関連のイベントに参加し,多くの方(イベントの講師,先輩,卒業生,教職員等)から経験を聞いた上で,自己分析や企業・業界研究,卒業生訪問を進めてほしい。自己分析の際に,例えば,今までの学生生活の中でどのような課題・難題に直面し,どのような取組を通じて解決・克服したかを振り返り,何を学んだか,自分の強み・弱みは何かを考えることをお勧めしたい。ポテンシャル採用を行っている日本においては,自分は成長できる人材であることを企業に伝える必要があるため,どのような経験を通じて,どのように成長できたかを言語化してほしい。例えば,自分の強みや実績ばかりを伝えるのではなく,失敗も含め,困難に直面したエピソードから,困難を乗り越えるために,自身の考え方や行動を変えた経験などが伝えられるよう言語化してほしい。どのように対策を打ち出したか,どのように行動したかは自分だけの個性であり,企業にとっては入社後の活躍をイメージさせる貴重な情報となる。また,業界・企業研究においては,既に特定の業界・企業に関心がある場合,何故関心があるのか,また,入社できた場合,どのような強みを生かし活躍できるかを考えてほしい。考える際には,学生時代に関心をもって打ち込み,充実感を得た経験があれば,共通する要素が何かも言語化してほしい。逆に,特に関心のある業界・企業がなければ,最初は範囲を広げ,多種多様な業界・企業に積極的に目を向けて欲しい。学生時代に知りえる業界・企業の情報はごく一部に限られており,社会には自分の知らない多くの業界・企業があるということを自覚することで,知らず知らずのうちに可能性を狭めてしまうことを防ぐことができるだろう。さらに,企業を選びきれない場合,人にフォーカスすることも一つの方法である。自分が尊敬できる,あこがれるような社会人に出会えたならば,そのような人が所属する企業は自分にもあっている可能性があると考え,より積極的に社員のこれまでの経験や,今後の展望などを聞き,見極めてほしい。コロナ禍を代表とする様々な社会問題は世界情勢に大きく影響をおよぼしている。この激変する世の中においては,今後の社会がどうあるべきか,その中で我々がどうするべきか等,正解のない問題に対し,理想に向かって主体的に考え,行動する人材の活躍が求められている。このような人材を育成・輩出するために,本学においては,中長期計画 WasedaVison1507)を策定し,学生には論理的思考(ロジカルシンキング)とエビデンスに基づいて議論する能力を身に着けてもらいたいと考えている。5.おわりに(日本語教員にできること)20早稲田日本語教育実践研究 第11号/2023/9―21

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