5センター最前線―「ことばの学びの中継点」の役割を果たすために―1.はじめに2.「CJL スタンダーズ」開発の目的と経緯「CJL スタンダーズ」開発の主な目的は,CJL プログラム全体において参照できる目標CJL で提供している科目は,大きく総合科目群とテーマ科目群に分かれ,各科目のレベ日本語教育研究センター 久保田 美子・濱川 祐紀代早稲田日本語教育実践研究 第 10 号 早稲田大学日本語教育研究センター(Center for Japanese Language,以下「CJL」)は,2011 年,学術院組織から離れ,「全学的」な教育研究機関となった。現在,200 科目以上の日本語科目 1)を開講し,全ての学部,大学院の日本語学習を希望する学生,また 1 年あるいは半年の「日本語教育プログラム」を受講する留学生を対象に,一元的に日本語教育を担っている。CJL では,早稲田大学 Vision150(2013 年〜 2032 年)に基づくグローバル化戦略に基づき,「日本語教育プログラムのポリシー」を掲げている 2)。さらに,現在,このポリシーに基づいた「CJL スタンダーズ」の開発に取り組んでいる。舘岡(2016,2018),池上(2019)は,CJL の目指すものとして「開放性」というキーワードを掲げ,連続性を意識した「ことばの学びの中継点」となる必要性について述べた。池上(2019)ではさらに「開放性を確保しつつ,明確な「接続」を創出する必要性」について述べている。多様な学習者との「接続」,様々な分野の学問との「接続」,そして様々な社会との「接続」,それらの「接続」を考え,「ことばの学びの中継点」となる使命を CJLは帯びている。そのような背景のもと,「CJL スタンダーズ」の開発は進められた。本稿で述べる「CJL スタンダーズ」の開発とは,単に目標参照枠を設定するだけでなく,その開発に関係する CJL ポリシー(3 章参照)の詳述,さらにはカリキュラム全体の枠組みの検討をも含む。本稿では,これら「CJL スタンダーズ」の開発の経緯,状況について,述べるものである。を構造化し,可視化することである。その参照枠は,単なる目標記述ではなく,CJL プログラムの指標となるものであり,この指標に基づき,個々の教員が創造的にカリキュラムを作り出し,CJL プログラム全体の質の向上に結びつけることが目指されている。ルは 1 から 8 までの数字で示されている。現在,科目履修希望者は CJL が独自に開発している CJL レベルチェックテストを受験することで,科目選択の目安とすることができるようになっている 3)。このようなテストが機能している中,CJL スタンダーズは,提携校へのコース説明など,学外も意識した汎用性の高い目標記述という観点から開発を行っている。また,後述する CJL ポリシーで示している「学習者が身につける資質,能力」「CJL スタンダーズ」の開発
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