注早稲田日本語教育実践研究 第10号/2022/75―78 過程に寄り添うということは難しい。加えて,先述したように,COVID-19 によって変化している就職活動や就業環境の実態を知る機会はこれまで少なかったと言える。そのような状況のなか,懇談の機会を得られたことは,学習者の現状を理解する上でも,自身の実践を振り返る上でも,大変有意義であった。また,採用において,人間性や基礎的・汎用的能力とも言うべき能力が重視されていることを確認できたことは,面接スキルやエントリーシートの書き方だけでなく,学習者の思考力や論理性,言語による自己表現力等を高めようと日々格闘している筆者らにとって,勇気づけられることであった。今後も,国内の就業環境は急速に変化していくと予想される。教員も学習者を取り巻くそのような環境の変化に留意しておく必要があると考えられる。その上で,日本語教育の観点から学習者のビジネスキャリアの課題を捉え,それぞれの授業を通して,彼らのキャリア支援について考え実践していきたいと考える。 1) 本懇談会は 2020 年 12 月 2 日に開催された。出席者は,キャリアセンター課長・塩月恭氏,沈向ソウ氏,日本語教育研究センター事務長・山口博之氏,漆畑竣太氏,今村文香氏,および,CJL の「ビジネス日本語」科目担当教員のうち出席が可能であった筆者ら 3 名であった。 2) 中央教育審議会(2011)「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(答申)において提示された「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」を表す。謝辞: 留学生のキャリア支援という問題につきまして,貴重な情報交換の場をつくってくださったキャリアセンター,および日本語教育研究センターの皆様に感謝申し上げます。参考文献中央教育審議会(2011)「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(答申) https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2011/02/01/1301878_ 1_1.pdf(2021 年 1 月 20 日)内閣府(2016)「日本再興戦略 2016 −第 4 次産業革命に向けて−」 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/2016_zentaihombun.pdf(2021 年 1 月 20 日)リクルートワークス研究所(2022)「第 38 回ワークス大卒求人倍率調査(2022 年卒)」 https://www.works-i.com/research/works-report/item/210427_kyujin.pdf(2021 年 1 月 20 日)早稲田大学キャリアセンター「進路データ」 https://www.waseda.jp/inst/career/about/data/(2021 年 1 月 20 日)(いとう ひろみ,早稲田大学日本語教育研究センター)(つばな ともこ,早稲田大学日本語教育研究センター)(とらまる ますみ(文責),早稲田大学日本語教育研究センター)78
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