早稲田日本語教育実践研究 第10号
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アルバイトその他 未定 活動中 合計1%0%1%2%1%1%就職や進学希望者の減少が 2020 年度から生じた COVID-19 の感染拡大に起因していることは明らかである。未だ先は見えないが,感染拡大に対応するための社会システムの変革がこのまま続けば,COVID-19 の収束後も,2019 年度以前の状況に戻らない可能性がある。年度日本で就職202025%201931%201831%2022 年卒業予定の大学生求人倍率は 1.50 倍となっており,昨年度の 1.53 倍から 0.03 ポイントの微減であったという(リクルートワークス研究所,2022)。労働市場全体から言えば,ほぼ横ばいと言える。しかし,留学生について言えば,COVID-19 の影響により,母国回帰の傾向が高まっていることは事実であろう。就職を射程に入れて日本留学を計画しても入国できずにいる者のほか,日本で学位を取得しても,心理的安定を求めて帰国する留学生は多いと考えられる。一方,留学生の国内就職を困難にしている要因には,以前から指摘されている留学生に特徴的な要因もある。本学の留学生で言えば,(1)留学生の就職活動の遅れ,(2)インターンシップ参加率の低さ,(3)キャリアセンターの不使用といった傾向である。就職活動に関して事前知識のある日本人学生の多くは,低学年から少しずつ企業や業界について調べたり,インターンシップに参加したりして,2 年生の後半か 3 年生の前半から就職活動を開始する。一方,留学生は,言語面や人間関係面で就職活動に関する情報が得にくい状況から,就職活動の開始時期が遅れる傾向がある。外資系企業等,採用スケジュールが日本企業と異なる企業もあるため,スケジュールを正確に把握し,迅速に行動する必要があるが,十分に対応できていない留学生が観察される。また,留学生のインターンシップ参加率が低いという傾向も顕著である。キャリアセンターから数多くの情報を流しているが,情報に気づいていない,探し方がわからない,英語で参加できるインターンシップが少ないといったことが原因であると考えられる。意に沿わないインターンシップに参加する必要はないが,より積極的な参加が期待される。さらに顕著なのは,留学生が学内リソースを活用していないという点である。これまで述べてきたような傾向から,留学生自身が就職活動に困難を感じていることが想像されるが,そのような状況になっても,キャリアセンターに相談に来る留学生は少ないという。予約すれば英語での相談も受け付けているので誰でも利用可能であるが,キャリアセンターの存在を知らないため,留学生の利用率が低い可能性がある。留学生に観察されるこれらの特徴に通底するのは,就職活動に関する情報不足である。もとより日本国内の就業に関わる社会文化的知識が希薄なことに加え,日本語レベルによっては,大量の日本語情報を収集するのは困難である。さらに,2 年間にわたるオンラ早稲田日本語教育実践研究 第10号/2022/75―78 9%27%100%6%26%100%5%22%100%76表 1 早稲田大学における外国人留学生の進路別割合海外で就職進学資格試験15%20%3%9%23%2%16%22%2%(早稲田大学キャリアセンター「進路データ」を参考に作成)

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