―学習環境を生かした取り組み―1.背景・ねらい2.「発音を考える動画」をつくるA: 好きな食べ物は,何ですか。 B: んー,いちばん好きな食べ物は空気です。A: 空気,食べられますか。 B: え,空気は食感が最高ですよ。A: え。木下 直子・趙 雪嬌・陳 曦早稲田日本語教育実践研究 第 10 号 科目名:日本語の発音(リズム・アクセント・イントネーション)を学ぶ 3-4 レベル:初級 1・2 /中級 3・4 ・5 /上級 6・7・8 履修者数:25 名 本稿の目的は,本科目で 2021 年度春学期に高度授業 TA,ボランティアと行った新たな取り組みを紹介することである。本科目は受講生が多く,十分な発音のフィードバックができないこと,発音の規則は教師からの一方向的な知識伝達になりがちで,受講生たちに考えさせる時間を十分に持てないという課題があった。さらに,2021 年度春学期もオンライン授業となったが,早稲田大学で日本語を学習する意義や早稲田大学で学習しているという実感をオンライン授業でも持たせることが課題であった。そこで,TA やボランティアを募集し,早稲田大学に在籍する大学院生,学部生とともにつくる授業を考えた。本稿では,「「発音を考える」動画をつくる」「コミュニケーションの場をつくる」の 2 点に焦点を当てて紹介するとともに,この取り組みを通して TA やボランティアが気づいたことについても報告する。 今回,受講生たちにミスコミュニケーションの原因を考え,どのように表現したらよかったのかについて話し合うための動画 11 本を作成した。場面や内容は,授業の各回のテーマ(木下・中川 2019)に合わせ,TA の趙と授業ボランティアとして参加した陳が自身の経験等をもとに選定した。ここでは,リズムの回の会話例を紹介する。 動画を視聴し,ミスコミュニケーションの原因や B が伝えたかったことについて話し合った。この活動により,正しい 1 つの答えを追求するだけでなく,学習者それぞれの経験や知識を出し合いながら,考える時間を持つことができた。受講生たちからは,すごく笑った,自分の発音をふり返る機会になった,毎回楽しみにしている等の反応があった。実践紹介65図 1 動画のイメージTA・ボランティアとつくる発音の授業
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