注早稲田日本語教育実践研究 第10号/2022/63―64 3.学生の学びと今後の課題を通し,問題点を把握すること,解決策を考えることに重点を置いている。 商品説明,企画などは,グループで協力して分かりやすい説明の仕方を考えたり,企画のアイディアを出したりして,まとめたことを代表者が発表する。発表内容については , 教員が内容をまとめたものを日本人ビジネスパーソンに送り,1 つ 1 つにコメントを書いてもらっている。学生はビジネスパーソンのコメントから問題点を把握し,改善策を考えることができる。企画のテーマは「旅行社の社員として日本紹介のビデオを作る/新規ツアーを考える」など企業のグループ面接時の課題を取り上げている。2-2.企業についてのプレゼンテーション ビジネス場面では,新製品,新規企画などについてのプレゼンテーションが行われる。そのため,ビジネスコミュニケーションの 1 つとして学期の最後に関心がある企業についてのプレゼンテーションを行っている。内容は,その企業を選択した理由,企業概要,採用情報,SWOT 分析 1),SWOT 分析から考えられる改善策と結論である。学生が企業のホームページ,先輩ビジネスパーソンへのインタビューなどから情報を収集し,企業の業界内の位置,強み,弱み,機会,脅威を調査することで,知識を深めることも目的である。 アンケートなどによると,ビジネスコミュニケーションの学習からは,ペア,グループ,クラス全体と何度も活動を繰り返すことで,自分の問題点が把握できるようになった。商品説明,企画などについてのビジネスパーソンのコメントからは,実践につながる説明の仕方や企画を学ぶことができたという意見が見られた。企業についての調査・発表からは,クラスメートの発表を聞くことで,いろいろな業界についての知識を得た。また,企業のルールを学ぶことができたという意見が見られた。 今後の課題としては,敬語表現の効果的な学習である。日本語上級レベルの学生が対象であるため,基本的な敬語表現については理解しているという前提で,自習用として敬語表現をまとめた説明資料を配付し,授業ではコミュニケーションの中で敬語表現を適切に使用できるようになる活動に時間を割いている。しかし,基本的な敬語表現を理解していない者も毎学期少なからずいる。そのため,ビジネスコミュニケーションの学習の中に,どのように効果的に敬語表現の学習を取り入れるかが課題である。 1) 企業分析の 1 つの方法で,Strength(強み),Weakness(弱み),Opportunity(機会),Threat(脅威)の 4 つの要素で分析する。4 つの頭文字をつなげ,SWOT 分析と呼ばれる。(ふくしま えみこ,早稲田大学日本語教育研究センター)64
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