早稲田日本語教育実践研究 第10号
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3.学習活動のねらい4.学生の期待と今後の課題・コロナ禍における内装・DIY の工夫と経費・日米の鉄道路線における発展と運営・アニメ聖地巡礼における経済効果・羽田空港国際便の増便のメリットとデメリット・オーストラリアの火事による損失・デリバリーサービスの発展におけるゴミ問題 本授業では,「読む」技術の向上を狙っているものではあるが,同時に学生各自が集めた情報とその理解,そして自分の考えをどのように発信すれば,相手に伝わるのか,について研鑽を積む場でもあると考え,運営をしている。 新聞の記事,クラスメイトの発表に全員が集中力をもち,関心をよせるということは,非常に難しいことである。また,上級学習者だからといって,誰もが質問をする力を持っているわけでもない。教員が,質問ができるように予習する状況をつくることもある。 上記の発表テーマのそれぞれの内容を聞くと,専門的語彙の説明,結論を下支えするデータの解説,詳細な地域情報など,きちんと調べられており,「学生さん,かなりがんばっているなぁ」と思う内容も多い。成功例である。その一方で,何を,どのような目的で,どのように結論づけた発表なのか,明確な流れをもたずに,中途半端な発表となるケースもある。 発表時は,情報や自分の結論の支えとなるように,出典を明らかにしたうえで,図・地図などのデータを活用することを推奨している。発表の内容をふりかえり,データの意味付けやキーワードの確認,結論までの流れの確認作業を,教員や学生からの質問を中心として,議論を深めるよう努力している。質疑は,教師中心よりも学生同士で高めたほうが,留学生特有の不足情報,弱点をうめられ,次の発表に活かされるようである。どの段階でも意見交流と質疑の連続によって,学習活動へのモチベーションがあがるよう,心掛けている。 「なぜ自分の発信が日本の社会人に通じないのか,この授業で理解できた」という学生からの感想をもらうことが多い。何を補足していけばいいのか,どう伝えればいいのか,7□8 レベルのクラスは,最後の日本語チェックとしての役割もあると思っている。今後も,客観的な自己評価や学生間評価をクラスで共有し,身近な社会問題や経済関連問題に向き合っていけるよう,さらに工夫したい。(いとう ひろみ,早稲田大学日本語教育研究センター)早稲田日本語教育実践研究 第10号/2022/57―58 58

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