1.経済記事を読む授業背景2.授業での取り組み伊藤 宏美早稲田日本語教育実践研究 第 10 号 科目名:経済記事を読む 7-8 レベル:初級 1・2 /中級 3・4・5 /上級 6・ 7・8 履修者数:5-15 名 本クラスの対象者は,すでに「上級ないしは超上級」の日本語の運用能力があると自認する学生で,読解に関して,ある程度の経験をもっている。しかし,経済や国際関係についての読み物には,あまり自信がない,読んだことがない,または,国際関係にからむ日本語の表現や語彙がよくわからないので,自らそれらの情報について発信することが上手くできない,という対象者である。加えて,将来的にあるいは現在進行形で,就職活動のおり,必要に迫られて,という学生も含む。 インターンシップに参加してみたが,自信があったはずの日本語なのに,うまくコミュニケーションが社内でとれず,職場の上司から「そういう勉強(社会人として知っておくべき日本語)に触れておかないと,お客様や社内交流に支障があるよ」と指摘され,受講するという学生も少なくない。2-1.教材 主たる教材として,『日本経済新聞』(以後,『日経』とする)を使用している。 『日経』は,1 か月 10 件まで,無料で記事が閲覧できる機会が読み手に許容されているため,タブレットや PC を活用して,読んでいる学生もいる。 紙媒体では,『日経』独特の縦読みに慣れるには,少し時間がかかる。また,政治経済学部や他学部で経済に興味を持ち,勉強してきた学部生でも声を出して読んでみると,意外と正確に読めない言葉が多かったり,読み方は調べ済みであっても,口がうまく回らなかったりすることがあるため,15 回授業の前半は丁寧に読むことを心掛けている。2-2.プレゼンテーション 学期中,中間と期末の 2 回に分け,1 人 6□10 分程度のプレゼンテーションを行っている。テーマは学生各自が選択する。オンライン授業では個人発表を基本にしているが,対面授業のときには,中間発表を 2□3 名のグループ発表で行っている。いくつか,発表例を以下にあげておく。・代替肉(大豆による代替肉)(コオロギ食品)・日本における ESG(環境・社会・企業統治)の状況57実践紹介経済記事を読む 7-8
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