CJL の「ビジネス日本語」科目もまた,日本語教育とビジネス日本語教育の流れを反映 CJL のビジネス日本語科目は,学習者が自身のキャリアについて考え,就職活動や職場実践紹介 編集委員会早稲田日本語教育実践研究 第 10 号 今号の「実践紹介」のテーマは「ビジネス日本語」である。「ビジネス日本語」というと,一般的に仕事で使われる日本語を指すが,その射程範囲は広い。就職活動のための実践から職場での会話やメールの書き方を学習する実践まで様々である。学習内容としても,四技能の学習に加え,ビジネス場面で役立つ敬語や配慮表現に特化したものが(「実践」が多いような……)ある。 さらに,近年の動向としては,言語能力の育成に加え,キャリア教育の視点をもつ実践や,異文化理解力を向上させるためのケース・スタディ,主体性や協働性を育むプロジェクト・ワークを主とした実践も多く見られる。文法・語彙学習から言語技能の学習,さらには人間性の育成へと射程範囲を広げる日本語教育の歴史的な流れがビジネス日本語教育の分野にも影響を与えていると考えられる。し,多彩に展開している。初級から上級(1 〜 8 レベル)に至る幅広いレベルを網羅する一方,学習内容としても,就職活動で必要とされる日本語,経済記事を読むための日本語,職場のコミュニケーション,敬語コミュニケーション,就職やキャリアについて考えるもの等,多岐にわたっている。CJL は科目の多様性と数の多さ,学習者の自律性を尊重した科目履修方法を特色としているが,ビジネス日本語科目においても,新入生から就職活動中の学習者それぞれの需要に応えられる科目を幅広く提供しているといえる。 無論,どのように多彩であろうとも,ビジネス日本語科目の根幹をなす理念は共通している。その理念とは,CJL 全科目に共通するディプロマ・ポリシーである。地球社会の中で,既成の国籍や文化では規定することができない複数の文化・言語を合わせ持ち,主体的に考え,他者と協働的に行動していくことができる人材の育成を目指す。問題発見解決力,創造的構想力,批判的精神,異文化理解を通して,新たな社会を創出できる地球市民を輩出する。で必要とされる日本語能力を向上させることを第一の目的としている。しかし,同時に,混沌とした現代において,新たな社会を創出できる人材を育てるという,CJL の壮大な目標を達成するための一翼を任っているともいえよう。 なお,「実践紹介」では特集テーマを設けているが,特集テーマに関わりなく,毎号優れた実践を数多く紹介している。今後も,学習内容や学習方法,活動,教材等,オリジナリティあふれる魅力的な実践を紹介し,CJL 全体で共有していきたいと考える。53実践紹介の特集テーマ<ビジネス日本語>に寄せて
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