早稲田日本語教育実践研究 第10号
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4-3.来訪時期2 週間に 1 回,1 週間に 1 回など,定期的な来訪をしていたのは,35 名中 25 名(71.4%)であった。定期的な継続来訪者の中で,セッションでの対応言語を特定していたのは 4 名(11.4%),曜日を特定していたのは 1 名(2.8%)であった。言語を特定していた 4 名中 3名は中国語を,1 名は英語を希望していた。授業では一般的に日本語を使用するが,アドバイジングでは来訪者にとって必要であると判断されれば,来訪者の母語で日本語学習に寄り添うことができる。そのような支援の在り方が教師による授業とは大きく異なっており(寅丸・吉田 2021),来訪者にとっては安心してアドバイジングを受けられる環境にあったと言える。曜日を特定していた 1 名(2.8%)は,中級レベルの非漢字圏出身の来訪者で,日本語での対応であった。会話練習や JLPT 関連の質問を目的として来訪していた。母語でのサポートの必要がない学生であったため,自身の授業時間や支援を受けやすいスタッフを選んで来訪していた可能性がある。一方,35 名中 10 名(28.6%)は,授業に慣れていない学期開始時や,期末試験が重なる学期終了時,もしくは大学院入試やレポート提出といった重要な課題がある時に,集中的に来訪していた。 このことから,継続来訪者は自身の目的や需要に自覚的であること,また,その目的や需要に合わせて対応言語や訪問時期を選択して施設を利用していたことが指摘できる。5-1.相談内容の内訳35 名分の「振り返りシート」の記述をもとに,来訪者の相談内容をカテゴリー分けし,その件数を算出した。その結果,カテゴリーは 13,相談内容件数は 70 件となった。表 4 は,来訪者の相談内容の内訳である。相談が最も多かった相談は「①授業」で,23件(32.9%)であった。具体的には,授業内で学んだ日本語の文法,表現についての質問,宿題の作文やスピーチ原稿のチェックが多く,復習の場として施設を利用している来訪者もいた。次いで,「② JLPT」に出題される文法や語彙表現についての相談で,11 件(15.7%)であった。この他,学習に関わる相談としては,授業と直結していないながらも「③会話練習」(10%),「⑨発音」「⑩書く」「⑪聞く」(同率,2.9%)といった四技能に関する相談や,学習計画を検討することを目的とした「⑦学習計画」(6%)に関する相談が見られた。一方,「④就職活動」(7.1%)「⑤大学院進学」(6.0%)といったキャリアに関する相談や,「⑥アルバイト」(6.0%)といった生活相談,あるいは心身の健康に関わる「⑧心理的不安」(4.3%)を訴える来訪者もいた。通常,日本語学習以外の相談内容については,来訪者に学内他機関を利用するように促しているが,このような現状は,本施設が多岐にわたる相談内容の一次相談の場として,留学生にとってハブ的な役割を果たしていることを示唆している(寅丸 2019)。5.相談内容48早稲田日本語教育実践研究 第10号/2022/45―52

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