1.はじめにNEWS』No. 8・No. 9 参照),来訪者の利用実態の詳細については,調査されていない。よショート・ノート吉田 好美・寅丸 真澄早稲田日本語教育実践研究 第 10 号 キーワード: 留学生支援,日本語自律学習,継続来訪者,相談内容,利用実態日本語教育研究センター(Center for Japanese Language, 以下,CJL)には,留学生支援の一環として開設された日本語自律学習支援施設「わせだ日本語サポート」(以下,施設)がある。2011 年の開室以来,主に大学院生スタッフにより,日本語だけでなく,英語,中国語等の多言語でピア・サポートを行っている。日本語学習の方法や学習計画の作成に関するアドバイジングをはじめ,文法・語彙表現・レポートの書き方等に関する日本語相談,学習リソースの情報提供,日本語学習に関連したセミナーやイベントの実施,日本語学習者(以下,学習者)の相談内容に応じた学内他機関の案内を行っている。これまで,来訪者数と相談内容については報告があるが(『わせだ日本語サポートり有効に,かつ効果的に施設運営やスタッフ養成を行うには,来訪者の背景や来訪目的,具体的な相談内容の実態を知ることが重要であると考える。そこで,本稿では,対面開室時の来訪者の中でも,特に「継続来訪者」(学期中に複数回施設を利用した来訪者)に焦点を当て,その実態について報告する。施設には多数の学習者が訪れるが,その中でも継続来訪者は一定数存在する。ピア・サポートによるアドバイジングは,「日本語学習に対する心理的障壁を低下させ,親身に対応してくれるスタッフに対して信頼感を高める」(寅丸・吉田 2021,p5.)と考えられている。継続来訪は,スタッフとの信頼構築ができた結果だと言える。そのため,継続来訪者はスタッフにとっても,支援のモチベーションを高め,その方法を振り返る機会を与えてくれる大切な存在である。施設では 1 週間に 1 度,担当教員とスタッフで定例ミーティングを実施し,アドバイジング・セッション(以下,セッション)の振り返りや改善に向けた話し合いを行っているが,継続来訪者については頻繁に話題になる。来訪回数が増えてくると,学習者の目指していることや日本語力の実態,学習ストラテジー等がわかってくるため,学習者個人に合わせた支援が可能になる。また,継続的なアドバイジングを通して,継続来訪者の日本語力が向上し,自律的な学習への取り組みが身についていくのを実感できる。スタッフは学習者の伴走者としての役割を果たしていると言える。そのような継続来訪者の中には,毎回授業課題を抱えて通ってくる者や,相談事がないのに顔を見せてスタッフと雑談していく者がいる(寅丸・吉田 2021)。また,レポートやプレゼンテーションの課題のある時だけ現れる者や,会話の練習だけに通う者もいる。利45「わせだ日本語サポート」における継続来訪者の利用実態に関する調査報告
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