早稲田日本語教育実践研究 第10号
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5.まとめしながら多様な漢字語を使用したし,フィードバックを受けながら正しいと思った表現が不自然な表現だという点を学びながら役に立った。」という感想からは,特徴②「実例から考え,その改善例から学ぶことで推敲力を鍛える」の効果が窺える。2.「難しかったこと,課題(もっと勉強したいこと)」としては,データの出典を明らかにしたり引用表現を主語によって変えなければならないこと,作文で自分の主張に対する反論を考えなければならないこと,アカデミック・スタイルにするために漢字語を使うこと,パソコンで漢字を打つことが挙げられた。本講座では,扱う学習項目が多く,項目に軽重をつけずにスケジュールを組んだため,特に難しいとされる引用表現に十分な時間を割くことができなかった。また,漢字語彙に関しても,同様の理由から課題文章の中で出現したものを導入したため,漢字にあまり馴染みのない学生にとっては難しかったようである。漢字の時間を個別に設ける等,学生に合わせた設計が必要である。3.「その他,日本語集中講座の感想」としては,短時間でライティング能力が上がったことが有益であったこと,さらに今後の学部の授業に対する意欲が挙げられた。本稿では,伊集院・髙野(2020)『日本語を学ぶ人のアカデミック・ライティング講座』をもとに実施した留学生の大学入学前教育実践を報告した。本テキストの内容構成面,言語表現面,形式面という 3 つの文章の評価観点は,自他の文章を評価・改善する際に有用であった。そして,これらを知識として学ぶだけではなく,学生自身がテキストの作文を改善するという課題や,自身が立てたテーマについてクラスメートから FB をもらいながら推敲しレポートを完成させるという過程を通して,AW スキルの上達を実感できたといえよう。また,これらは前述の「スタディ・スキル」の育成にもつながったと思われる。今後も様々な実践を積み重ねていくことで留学生の大学入学前教育を充実させていきたい。参考文献伊集院郁子・髙野愛子(2020)『日本語を学ぶ人のアカデミック・ライティング講座』,アスク出版 .堀井惠子(2006)「留学生初年次(日本語)教育をデザインする」門倉正美・筒井洋一・三宅和子編『アカデミック・ジャパニーズの挑戦』ひつじ書房,pp. 67-78吉田稔「とにかくゴミを減らしたい」『NHK NEWS WEB』2021 年 2 月 25 日  <https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210225/k10012884911000.html>(2021 年 9 月 24 日閲覧)(おばた みなえ,早稲田大学日本語教育研究センター)(みたに あやか,江戸川大学国際交流センター)(ちん ぎ,早稲田大学日本語教育研究センター)早稲田日本語教育実践研究 第10号/2022/37―44 44

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