早稲田日本語教育実践研究 第10号
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  この記事をもって(4)コロナ禍の中でも環境問題を解決するため様々な努力をしている日本の企業の状況が分かる。あとは消費者の分である。いくら企業が先立って環うに取り組んでいるのかに関する記事を紹介したい。なぜこの記事を選んだかというと,コロナ禍で大きく変化した我々の生活のなかで(1)環境問題を少し後回しにしている傾向があるのではないかと思われたからだ。企業と消費者の環境問題の取り組みを取り上げた記事の選定理由として,(1)を挙げているが,クラス内で「なぜ後回しにしてはいけないか。そこにユンさんの問題意識があるのではないか。」と,選定理由の背後にある問題意識を掘り下げようとする指摘が出た。そこで,ユンさんは次の文章を追加した。 現在,コロナ禍によって積み上がったプラスチックごみを(2)日本の企業や社会はどう向き合って解決しているのかと考え,この記事を選択した。この記事をもとに,(3)企業の動きにそって消費者はどう意識を変化すべきかに関して考察する。追加された文章を見ると,(2)という,コロナ禍によって増加したプラスチックごみ問題について,日本の企業や社会が解決すべきである,というユンさんの問題意識が現れている。さらに,(3)という考察の視点も示された。これは,消費者である自分自身はどう向き合うかという,プラスチックごみ問題を我が事として捉える主張が出てきた。この主張を受け,考察部分には次のように記述された。境問題を取り組んでいるとしても,(5)消費者が意識を変化しなければ無用だろう。新型コロナウイルスが流行しているため,環境問題を度外視しがちな状況だが,(6)企業の動きにそって個人まで協力すればより容易にプラスチックごみを減らすことができるのではないか。 ニュース記事から日本の企業の状況((4))を示し,企業の取り組みを確認した上で,(5)と消費者に視点を移し,消費者個人が意識を変える必要性((6))を主張している。3-3-2.言語表現言語表現では,引用について取り上げる。課題では,興味のあるニュースについて引用しながら紹介することが求められていた。ユンさんが引用したのは,『NHK NEWS WEB』の「とにかくゴミを減らしたい」(2021 年 2 月 25 日掲載)という NHK の経済部記者,吉田稔氏がまとめたインターネットニュースの記事であり,同記者がデータを引用しながら,テーマに沿って書いたものである。ユンさんは,この記事の中にあるデータを引用したり,記者の主張や見解を引用したりした。ここでは,引用部分について記者が調べて引用しているのか,記者自身の主張なのかが不明であった事例について述べる。記事では,日用品チェーン大手の良品計画が始めたプラスチックごみの削減を目指した(第 7 回目提出レポート)(第 8 回目提出レポート)            (第 8 回目提出レポート)早稲田日本語教育実践研究 第10号/2022/37―44 42

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