本レポートでは,コロナ禍以来プラスチックごみの環境問題を企業と消費者がどのよようになったが,アカデミック・スタイル等の【言語表現】の指摘が多く,【内容構成】についての質問,指摘は見られなかった。本講座の第 1 週,第 2 週の課題は 800 字以内と字数が少なく,構成が比較的複雑にならないことも理由として考えられるが,長い文章の場合に,【内容構成】についての指摘ができるかについては,懸念が残った。【内容構成】の学生による FB については今後の課題である。授業中の課題については,先に示した図 1 の学習項目について,まず,第 1 週・第 2 週ともにテキストの「Step1・2 の進め方」(p. 7)に沿って,①その回で取り上げるトピックについて簡単に話す(「書く前に」),②テキストの課題(「考えよう」)を学生間で行う,③課題について,教師が FB をする(「改善例」),④テキストの練習問題をする(「表現例」),⑤宿題の課題作文についての説明をする(「書いてみよう」)といった順で進めていった。テキストの「考えよう」では,各回の学習項目に合わせた作文の実例が載っており,その作文の改善点を指摘するという活動を学生間で行った。課題を行う際には,教師はカメラオフ・ミュートにし,学生だけの場を作るように努めた。講座開始時は,アカデミック・スタイルというものに実感がなかったようで,あまり意見が出なかったが,各回の学習項目で少しずつアカデミック・スタイルの表現が蓄積されていったためか,第 2 週の終盤は,積極的に,また,理由付けもしながら修正ができるようになり,【言語表現】に関しての能力向上に手ごたえが感じられた。ただし,【内容構成】に関しては,第 1 週・第2 週の計 6 回の授業では時間の制約上,扱いきれなかったように思う。3-3.レポート作成本節では,第 3 週に行ったレポート作成の過程について述べる。第 3 週では第 6 回目の課題レポートを修正し完成させた。ここでは事例として,ユンさんが書いたレポート「コロナ禍におけるプラスチックごみの現状と日本企業の取り組みについて」を取り上げ,レポート評価基準表の【内容構成】,【言語表現】について,クラス内でそれぞれどのようなことを検討したかについて述べる。なお,ユンさんの実際の記述部分の引用はゴシック体で示し,括弧付きの数字と下線は筆者が付した。3-3-1.内容構成【内容構成】は,テキストに沿って「動機(はじめに)」「分析」「考察」の 3 つの項目で書くことが指示されていた。「動機」と「考察」部分において,ユンさん自身の問題意識と主張が明確になっていった過程について述べる。韓国では,近年,世界中でプラスチックごみが環境に与える影響が問題となっていること,新型コロナウイルス拡大により,飲食店で食べるのではなくテイクアウトの需要が増えたことで,家庭ごみ,特にプラスチックごみが激増したことから,プラスチックごみをできるだけ減らそうという意識が高まっているという。これらを踏まえ,ユンさんはレポートの冒頭に「動機(はじめに)」として次のように記述している。41ショート・ノート小畑美奈恵・三谷彩華・陳曦/大学入学前教育としてのレポート作成授業の可能性
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