この講座を通してどうなりたいか日本語らしい日本語を話せるようになりたい。日本で問題なく生活できるようになりたい。好きな食べ物,日本で行きたいところと理由)の時間を設けた。なお,「この講座を通してどうなりたいか」も聞いた(表 4 参照)。項目日本語学習期間名前ユンさん高校 3 年間リさん中学校 1 年間+高校 3 年間 日本語で文書を書くとき,もっと上手になりたい。その後,これまでに日本語でどのような種類の作文を書いたことがあるかを聞いた上で,小論文とレポートの違いを確認した。また,最初の力試しとして,テキスト第 1 課の「新聞や雑誌は必要かどうか」に関する 3 つの文章について,文体,接続表現・指示表現・文末表現,内容・構成に注目し改善する練習を行った。その上で,学生に考える時間を与えてよりよい文章の条件を考えてもらった後,【内容構成】,【言語表現】,【形式】という3 つの評価の観点から提示し,レポート評価基準表の認識を共有した。授業の最後には,振り返りを行うようにした。振り返りでは,アカデミック・ライティングの基本として知識を身につけたかどうかを確認するため,授業で学んだことについて,「既に知っていたこと」と「知らなかったこと」を軸に話してもらった。第 1 週の振り返りでは,受講学生がアカデミック・ライティングの【内容構成】や【言語表現】についてある程度の知識を既に有していたことが明らかになった。一方で,アカデミック・スタイル特有の客観的な書き方といった表現や段落の最初のスペースの数等の形式等知らないものも多々あることも明らかになった。3-2.レポート作成のための基礎本節では,レポート作成のための基礎を身につけるために行った,宿題の FB と授業中の課題の進め方について述べる。宿題の FB は,毎回の授業の冒頭に,次の手順で行った。まず,学生が互いの作文を読み,①序論,本論,結論がどのように構成されているか,②テーマ,主張,根拠はどこに書かれているか,③日本語表現で不適切な箇所はないかを確認してもらった。①②はレポート評価基準表の【内容構成】,③は【言語表現】にあたる。【形式】については,第 1 週に学んだ形式・分量が守られていたため,問題としなかった。次に,教師も含め,各作文の FB を口頭で行った。作文の表現の細かな箇所の指摘については,教師が次回の授業までに Word のコメント機能で指摘し,返却した。全体の FB では,学生の作文を画面上で共有し,【内容構成】,【言語表現】について確認した。【内容構成】にあたる①②に関しては,第 1 週で学んだ作文の構成がよく反映されており,書き手と読み手で内容理解の齟齬は起こらず,スムーズに進められた。しかし,【言語表現】にあたる③に関しては,覚えきれていないアカデミック・スタイルのミスがいくつか見られた。学生が気づかないミスは,教師がハイライトを付け,気づきを促した。講座の開始当初は遠慮がちであった学生が,回を重ねるごとに的確な指摘ができる40早稲田日本語教育実践研究 第10号/2022/37―44表 4 受講学生の日本語学習期間と講座に対する希望
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