7センター最前線久保田美子・濱川祐紀代/「CJLスタンダーズ」の開発4.総合科目群の目標記述 ver.1Learning, teaching, assessment)の言語教育観,能力記述を参考にした。CEFR は,欧州評 CEFR では,行動指向アプローチをとり,言語使用者が社会的文脈において成し遂資質・能力「自他を理解する力」「コミュニケーション能力」「自律性」「協働性」「問題を発見し解決する能力」「批判的思考力」表 1 の記述は,「日本語教育プログラムのポリシー」の記述をより詳細に理解し,DP(プログラム修了に関する方針)に照らしてどのようなスキルが評価されるべきなのか検討を重ねた結果である。今後このポリシーがどのようにカリキュラムの中で実現されていくのか検証する必要があろう。後述する目標記述が揃った段階で,その評価も含めて,検証を進めていくことになるものと考える。検証の枠組みについては,後述の 5 章で述べる。本章では,「総合科目群の目標記述 ver.1」の開発について述べる。4□1 では目標記述にあたって参照した理念について説明し,4□2 では具体的な目標記述について述べる。4-1.目標記述の理念目標記述にあたっては,CEFR(Common European Framework of reference for Languages: 議会言語政策部門の専門家チームが 30 年以上の研究を経て 2001 年に現在の形で発表したものである。行動指向アプローチと複文化主義を理念とし,Can-do 記述文を用いた能力記述の体系を提示している(Council of Europe 2020)。投野編(2013)では,CEFR の理念である「行動指向アプローチ」について,以下のように述べている。げたい目的達成のために必要となる言語コミュニケーション能力と一般的な能力が用いられることを明らかにし,社会的な存在として持つべき言語能力育成のための包括的で一貫性のある共通参照枠を提供している。その際,言語に関する知識だけを切り離して教育するのではなく,より自然な言語使用の活動を通して,各自の言語コミュニケーション能力の育成を目指すことが大切にされている。(p. 17)「社会的な存在」を重視した「行動指向アプローチ」は,前述の CJL ポリシーの中で述評価可能なスキル表 1 6 つの資質・能力・地球社会の中で,複数の言語文化を合わせ持つ者としての自己を形成できる。・相互理解のためのコミュニケーションができる。・主体的に経験を振り返り,自己の成長へとつなげ,持続的に学ぶことができる。・異なる文化背景の人と対話し,新しいやり方で課題の解決策を考えることができる。・問題に対して自分の持つ知識や情報をもとに創造的かつ論理的に考えることができる。・批判的に思考し,問題解決のための視点・認識を形成することで,建設的な提案を行うことができる。
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