5センター最前線寅丸真澄・吉田好美/「わせだ日本語サポート」の挑戦た,留学生と同じ目線で,時には同じ母語で日本語学習に寄り添うという支援のあり方が教師による授業とは大きく異なっている。このようなピア・サポートは,留学生の日本語学習に対する心理的障壁を低下させ,親身に対応してくれるスタッフに対する信頼感を高める。来訪者の中には,開室日に毎回授業課題を抱えて通ってくる留学生もいれば,相談事がないのに顔を見せて雑談をしていく者もいる。一方,スタッフも担当教員を含めた定期ミーティングでの情報交換や研修に加え,自主的に勉強会を開くなど,日本語教育や自律学習に関する知識,アドバイジング・スキルの向上に努めている。スタッフの多くが研究科修了後,日本語教師やコンサルティング等の業務に就いており,「わせだ日本語サポート」でのサポート経験がスタッフのキャリアにも影響を与えていると考えられる 4)。「わせだ日本語サポート」は,留学生とスタッフ双方の学びの場であると考えられる。3-2.多様な支援活動「わせだ日本語サポート」では,主に以下の 6 つの支援活動を行っている。(1)日本語学習アドバイジング「わせだ日本語サポート」の中核をなす支援活動である。留学生が自律的に学習できるように,スタッフが留学生と一緒に日本語学習の方法や計画を考える。留学生の中には,長期間学習しているが効果が実感できない,どのような教科書を使ってどのように学習したらよいかわからない,履修科目が多く授業課題がこなせないといった学習方法や学習計画に関する悩みを訴える者がいる。そのような問題を解決するため,スタッフが学習全体を俯瞰的に捉え,留学生それぞれにふさわしい学習方法を提案したり,学習計画を一緒に検討したりしている。(2)日本語相談相談の中で最も多いのが日本語の文法や語彙,表現,レポートの書き方や発表の仕方等,日本語に関する質問や相談である。宿題のレポートを自力で書いたものの読み手に伝わる文章になっているか不安である,テキストに出ていた類義語の使い方が辞書の説明だけではわからない,プレゼンテーションの練習をしているがイントネーションがわからないといった日々の宿題や自習の過程で生じた質問に対応している。「わせだ日本語サポート」は予約制ではないため,授業直前に課題のチェックをしてもらおうと駆け込んでくる留学生もいる。そのような緊急の質問や多様な質問に答えるべく,スタッフは自身の専門分野に関わらず,常に日本語に関する知識を深め,的確なアドバイスを行えるようにしている。(3)日本語学習リソースの提供これは日本語学習に役立つ様々なリソース情報を提供する支援である。アドバイジング・セッションの過程で使えるように,専用室には教科書や参考書が置かれており,常設3 階の学生読書室に日本語教育関連の教材が揃っているため,専用室に置いていない教材については,留学生を学生読書室に案内して紹介することもある。さらに,スタッフが定PC からオンライン上の学習リソースにアクセスできるようになっている。また,22 号館
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