83年度報告寅丸 真澄・吉田 好美早稲田日本語教育実践研究 第 9 号 2020 年度は,COVID-19 拡大の影響により,春学期の授業開始が 5 月 11 日に延期されたため,「わせだ日本語サポート」の開室も,その翌週 5 月 19 日からとなった。スタッフは,2019 年度秋学期同様,大学院生 8 名であった。早稲田大学における授業すべてがオンラインで実施されるなか,「わせだ日本語サポート」の学習アドバイジング・セッションもすべてオンラインで行われることになった。実施形態を変更したのみで,開室時間や支援内容等は従来通りであったが,学習アドバイジングの来訪者は,年度計でも 178 名と激減した(2019 年度 614 名)。その理由としては,留学生の減少や突然の環境変化による心理的余裕のなさ,学内活動すべてがオンライン化されたことによる「わせだ日本語サポート」に関する情報不足,さらに,Zoom によるオンライン・セッションへの抵抗感等が挙げられる。このような状況を打開し,学習支援を必要としている学生に機関の存在を周知するため,新入生向け機関紹介動画の作成と日本語教育研究センター HP への掲載,My Wasedaによる広報,授業で使用している LMS(Moodle)での周知等を行った。また,気軽に友人関係を築くことのできない学生たちのために,昼休みに自由に話せる「フリートークセッション」の場を作った。さらに,自国で授業を受けたり,国内にいても自由に外出したりできない学生たちのために,スタッフ一丸となってセミナーやイベントをより一層充実させ,日本語学習のみならず,文化や生活に関わる多彩な話題と経験の場を提供した。その結果,セミナーやイベントの参加者は,春学期 241 名(全 15 回),秋学期 173 名(全 17 回)となり,年度計では 32 回 414 名の学生を迎えることとなった。これらの参加学生の中には,セミナーやイベントを開催するたびに訪れる学生もおり,学習アドバイジングのみならず,幅広い観点から学生の日本語学習のモチベーションを維持,向上させ,学生の興味に合った日本語学習リソースと学習支援を提供できたのではないかと考える。2020 年度は,以上のように,従来とは大きく異なる形態の日本語自律学習支援を行うことになったが,模索し実践する過程で,「わせだ日本語サポート」の新たな可能性を見出せたことは収穫であった。1 点目は,オンライン・セッションの可能性である。対面セッションの需要は高いが,物理的,時間的余裕のない学生のアドバイジング機会を増やすことができる利点は大きい。また,2 点目は,日本語自律学習支援を多視点から捉えられたことである。学習アドバイジングを核としながらも,様々な観点から学生の自律的な日本語の学びを支えていくことができることを実感した。2021 年度も不透明な状況にあるが,2020 年度の経験を活かし,よりよい日本語自律学習支援を行っていきたいと考える。1.2020 年度 総括「わせだ日本語サポート」活動報告
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