早稲田日本語教育実践研究 第9号
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76早稲田日本語教育実践研究 第9号/2021/75―77②来訪者への聞き取り調査特に利用回数の多い来訪者(以下,「リピーター」)に対して,機関を利用する目的,利用の仕方,支援を受けた感想,要望等についてインタビューし,分析する。③実態調査とインタビュー調査の整理と還元①の実態調査と②の聞き取り調査で得られた分析結果を整理し,それらの知見をどのように機関の運営やスタッフ養成に活かせるか検討する。2020 年度春学期には,来訪者ニーズの実態調査を行った。機関の来訪者記録とスタッフの勤務報告書をもとに,利用状況を分析した。分析対象者となった来訪者は,2018 年秋学期(213 名),2019 年春学期(340 名),2019 年秋学期(271 名)の来訪者,計 824 名である。来訪に至った目的と相談内容について分析を行った。2020 年度秋学期には,春学期に実施した実態調査を継続し,量的分析と質的分析を進めた。さらに,リピーターに対して,機関を利用する目的,利用方法,支援を受けた感想,要望等についてインタビューを行った。ただし,2020 年度は COVID19 の影響により,これまでの対面セッションから ZOOMによるオンライン・セッションになったことや,大学全体の留学生数の減少から,来訪者は前年度より減少した。そのため,調査対象となるリピーターの確保,および対面セッションに関する聞き取りは困難を極めた。結果的に,リピーターに対するインタビューは実施できたものの,大部分がオンライン・セッションに関する内容で,対面セッションについてのヒヤリングは少数にとどまった。2 章で記した活動計画の段階別に,成果と今後の調査の予定を述べていく。①来訪者ニーズの実態調査調査対象となった全期を通じて,来訪目的としては「授業」「キャリア(就職)」「キャリア(進学)」「宿題」「学習方法」「文法」,相談内容としては「リソース」「文章添削」「文章チェック」「語彙の使い分け」が多く見られた。来訪目的と相談内容のほとんどが日本語自体に関するものであったと言える。一方,数は多くなかったが,心理面に関する相談が観察された。そのうち,不安を抱えて来訪する学生については,不安の対象が授業,教員,日本人とのコミュニケーション,モチベーションの維持や低下など,多岐に渡っていることが分かった。さらに,リピーターの利用実態に傾向があることも明らかになった。調査対象となった全学期において,いずれも再来訪率が 5 割を超えていた。総来訪者数(延べ数)のうち,半数がリピーターであったと言える。相談内容が「文法チェック」といったように一貫していたリピーターが観察される一方,来訪ごとに変わる者もいた。3.活動実績4.研究成果概要

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