4早稲田日本語教育実践研究 第9号/2021/3―10学大学院日本語教育研究科の大学院生等数名が中心となり,来訪する留学生の支援を行っていた 2)。その後活動の幅を広げ,3 階に付設された学生ラウンジ“Waseda International Learning Lounge”(以下「WILL」)内の専用室に移動し,現在は 2 名の担当教員と 8 名の院生スタッフが活動している。「わせだ日本語サポート」の現在の目的は,CJL の中枢となる日本語授業とは異なる側面から,教室外の日本語自律学習支援を通して,留学生の日本語能力の向上と,本学および CJL の目指す「自律的な人材」の育成に寄与することである。その背景には,CJL が抱える次の 3 つの課題がある。1 点目は,留学生の増加と多様化が進む現状において,留学生が個々の日本語学習ニーズを満たすためには,自身による学習内容や学習方法の選択,管理が必要になるということである。授業内の学習項目を理解し運用するだけでなく,独自の学習をデザインし実践することが期待されていると言える。また,2 点目は,学校教育の最終段階である高等教育機関の最重要課題として,学習者の自律性の育成が必須だということである。CJL では,日本語教育プログラム(Japanese 生を受け入れている。出身国や出身地域,年齢も多岐にわたるが,その多くは大学院進学や就職という進路を目指している。自律性の育成は,留学生の卒業後のキャリアを支援する最も重要な課題の一つであると考えられる。さらに 3 点目は,全学的な教育機関である与することが期待されているということである。早稲田大学の「Vision150」では「グローバルリーダー」,CJL では「地球市民」の育成が目指されており,いずれも主体性や自律性の育成が課題の一つとなっている 3)。これら 3 つの課題が想定する「自律的な人材」とは,自身の学習やキャリアを主体的に選択し,デザインし,他者と協働しつつ全うしていける人材である。「わせだ日本語サポート」では,そのような想定を踏まえ,留学生の学習動機や学習目標,キャリアを見据えた長期的な視点で日本語自律学習支援を行っている。本機関は,日本語自律学習支援という立場から,本学および CJL の目指す人材育成に寄与していると言える。3-1.支援体制とスタッフ22 号館 WILL 内の「わせだ日本語サポート」専用室では,毎週 3 日,1 日 6 時間(12時〜 18 時,開室は 17 時 30 分まで),2 〜 3 名(全 8 名)の学習アドバイザー兼スタッフ(以下,「スタッフ」)による 1 対 1 のピア・サポートが行われている。留学生とスタッフは,専用室に個別に配置されたテーブルを囲んで,最長 45 分のアドバイジング・セッションを行う。本学の留学生であれば,予約不要で誰でも利用できる。スタッフは日本語教育研究科をはじめ,教育学研究科,政治学研究科等の大学院生である。ほとんどのスタッフは研究科を修了するまで在籍しており,博士課程に在籍していたスタッフの中には,4 年以上在籍していた者もいる。また,留学生スタッフを含め,スタッフのほとんどが日本語に加え,英語,中国語等,複数言語での対応が可能である。まLanguage Program,以下「JLP」)の留学生をはじめ,学内の学部や大学院から多数の留学CJL の一組織として,本学および CJL のディプロマ・ポリシーに示された人材育成に寄3.支援活動
元のページ ../index.html#8