早稲田日本語教育実践研究 第9号
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69研究報告寅丸真澄・井下田貴子・伊藤奈津美・岩下智彦・沖本与子/CJLで学ぶ学習者のためのレベル判定テスト開発 認できた。そのため,2021 年度からの本運用を決定した。なお,「聴解・読解」完成までの経過措置として,総合日本語 6 レベル修了相当の質と分量を想定したアカデミック・レポート作成の課題を課し,その評価基準および評価方法の策定も順調に進んだ。アカデミック・レポート作成課題も,学習者の日本語能力の測定に一定の成果を上げたが,2021年度以降は「聴解・読解」テストに代替される予定である。2021 年度は,「文法・語彙」の等化,および 20 年度に完成した「聴解・読解」の 2 冊子化を行う計画である。具体的には,作成済の「文法・語彙」の問題セット 3 冊のセット間の難易度レベルの平準化,及び将来的な問題セット変更作業時の妥当性・信頼性の維持のため,近年,テスト理論のスタンダートとなった IRT を用いて等化の作業を行う。これにより難易度が均等な問題セット 3 冊が確定する。また,「聴解・読解」に関しては,繰り返し使用による項目露出に対応するため,すでに完成している項目に新規項目を加えた問題セットを使用して調査,分析を行い,その結果に基づき「聴解・読解」の 2 冊子化を行う。本プロジェクトの成果は,先述したように,学習者,日本語教員,CJL,他学部・他箇所に対して次の点において還元しうると考えられる。(1)学習者が多種多様な日本語科目を自律的に容易に選択できるようになる。(2)履修者の日本語レベルが明らかになるため,教師の授業運営が円滑になる。(3) 調査結果は,現在のコース履修者の学習成果を反映しているため,今後のコース開発に役立てることができる。(4)他学部・他箇所において,日本語科目の履修単位の指導が実施しやすくなる。これらは CJL の課題,すなわち,学習者の自律性の尊重と自律学習の促進,クラス内のレベル差への対応が深刻な課題となっている教室運営の負担軽減,今後のコース開発,全学の日本語教育に関わる他学部・他箇所との連携という 4 つの課題に対応している。本プロジェクトは,テスト開発という観点において CJL の課題解決の一助になりうることから,CJL 事業に深く関連するとともに,その研究成果を CJL の現場に十分還元しうると考える。(とらまる ますみ,早稲田大学日本語教育研究センター)(いげた たかこ,早稲田大学日本語教育研究センター)(いとう なつみ,早稲田大学日本語教育研究センター)(いわした ともひこ,早稲田大学日本語教育研究センター)(おきもと ともこ,早稲田大学日本語教育研究センター)4.2021 年度の計画5.日本語教育研究センター事業との関連性と研究成果の還元方法

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