早稲田日本語教育実践研究 第9号
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68早稲田日本語教育実践研究 第9号/2021/67―69つということである。そして第 4 に,学習者の日本語レベルが数値的に可視化できれば,他学部において行われている留学生を対象とした日本語科目の履修単位指導にも寄与できるということである。2019 年度は,総合日本語科目 1 〜 6 レベルの履修者を対象に春学期に「文法・語彙」(総合日本語 1□2・集中日本語 1□2:60 問セット,総合日本語 3□6:90 問セット),秋学期に「文法・語彙」(総合日本語 1□2・集中日本語 1□2:45 問セット,総合日本語 3□6:90問セット)と,漢字 2 〜 5 レベルの履修者を対象とした「漢字」(漢字 1□5:90 問セット)の試用を行い,解答の分析とテスト項目・形式の改善を進めた。「文法・語彙」および「漢字」におけるレベル別の平均正答率,および標準偏差の分析結果から,学生のレベル判定指標としての有効性が証明された。また,テスト開発の過程で,他学部内における履修科目指導上の基準となる上級者向けテストの作成要請があり,「文法・語彙」「漢字」に次ぐ「聴解・読解」として,2019 年度秋学期より聴解問題および読解問題の作成に着手した。2020 年度は,以上のような 2019 年度の活動を受け,(1)受験者能力の弁別に寄与していない項目や想定した正答率と異なる難易度の項目を入れ替える,(2)2019 年度同様「文法・語彙」「漢字」の調査試用を行い,分析および問題セットの精度を高める,(3)「聴解・読解」問題作成後,調査試用と分析を行うという 3 点が計画された。2020 年度は,活動計画に挙げられていた 3 点の活動を行った。まず,2020 年度春学期,「文法・語彙」(総合日本語 1□6:90 問セット)においては,新入生を対象として学期開始前に事前受験を,総合日本語 2 〜 6 レベルの新入生・在校生を対象として授業期間中に授業内受験を実施した。「漢字」においては,新入生・在校生を対象とした事前受験と学期末の授業内受験を実施した。春学期は,COVID-19 拡大の影響により春学期の授業開始が1 か月以上遅れたため,テストの実施も混乱を極めたが,「文法・語彙」「漢字」ともに授業内受験を行うことにより,一定の調査協力者数を確保することができ,調査分析を円滑に進めることが可能となった。これらの収集データの分析の結果,「文法・語彙」「漢字」ともに一定の妥当性と信頼性が確認できた。そのため,2020 年度秋学期は,新入生を対象とした事前受験とともに,新入生・在校生を対象とした学期開始時の授業内受験を実施した。なお,2021 年度より新入生・在校生を対象とした事前受験のみ実施することとし,科目登録のための日本語レベルの把握という本来の目的に適った本運用を行う予定である。一方,「聴解・読解」については,2019 年度より開始した問題作成作業を完成させるとともに,聴解テストの音声収録を行い,春学期終了後にパイロット調査を実施した。「聴解・読解」については読解テキストの掲載方法や,聴解素材における一部音声の明瞭性に対する懸念が生じたが,パイロット調査は円滑に行われ,問題内容の妥当性と信頼性が確2.2020 年度の活動計画3.2020 年度の活動実績

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