早稲田日本語教育実践研究 第9号
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67研究報告井下田 貴子・伊藤 奈津美・岩下 智彦・沖本 与子寅丸 真澄早稲田日本語教育実践研究 第 9 号  本プロジェクトの目的は,早稲田大学日本語教育研究センター(以下,CJL)における日本語レベルを日本語学習者(以下,学習者)が自身で把握できるようにするためのテストを開発することである。本テストの開発,実施により,学習者が自ら日本語レベルを適切に把握できるようになれば,CJL において展開されている多様な日本語科目を容易に選択できるようになるとともに,教師の授業運営が円滑になる。また,他学部において行われている留学生に対する日本語科目の履修単位指導にも寄与できると考える。本プロジェクトの目的は,早稲田大学日本語教育研究センター(以下, CJL)における日本語レベルを日本語学習者(以下,学習者)が自身で把握できるようにするためのテストを開発することである。自身が日本語学習の目的とレベルに合わせて科目選択を行うことが推奨されている。そのための判断基準として,これまでは J-CAT と CJL の 1 〜 8 レベルを紐づけた対照表を利用していた。学習者は,科目登録前に J-CAT を受験してそのスコアをもとに自身のレベルを特定し,履修科目を選択していたのである。しかし,2020 年度より J-CAT 受験に関わる手続きに変更が生じる可能性が発生した。そこで,それを契機に,CJL の学習内容をより反映したテストを開発し,その得点により学習者が自身の履修レベルを判断できる環境を整備する方向性が検討された。その結果,CJL では,2018 年度に独自のテスト開発を行うことを決定した。その後,テスト・システムの選定や問題数,形式等の枠組みの検討,項目作成等の準備を行い,2019 年度より CJL 設置科目履修者を対象に試用を開始した。本プロジェクトで開発するテストは,「CJL レベルチェックテスト(文法・語彙)」「CJLレベルチェックテスト(漢字)」「CJL レベルチェックテスト(聴解・読解)」の 3 種である。本報告では,それぞれ「文法・読解」「漢字」「聴解・読解」と記述する。これらのテストの開発,実施により期待されることとして次の 4 点が挙げられる。第 1に,学習者が自身の日本語レベルを適切に把握できるようになれば,CJL において展開されている多様な日本語科目を自律的に容易に選択できるようになるということである。第2 に,学習者個人のレベルが把握できれば,これまで学習者のレベル差が可視化されず支障をきたすことがあった授業運営が円滑になるということである。第 3 に,現在のコース内容に即した学習者の習熟度の把握が可能となり,今後のコース開発のための検証に役立設置主旨1.プロジェクトの目的と経緯CJL では,学習者の自律性を尊重し,所謂プレースメント・テストは実施せず,学習者CJL で学ぶ学習者のためのレベル判定テスト開発

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