早稲田日本語教育実践研究 第9号
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3センター最前線日本語教育研究センター 寅丸 真澄・吉田 好美早稲田日本語教育実践研究 第 9 号 日本語教育研究センター(Center for Japanese Language,以下「CJL」)は,2011 年に学術院組織から離れて全学的な教育研究機関となり,現在,一元的に早稲田大学における日本語教育を担っている。早稲田大学では「Vision150」に示されているとおり,2032 年には1 万人の留学生の受け入れを目指しており,全学の外国人留学生数 1)も年々急増している。2020 年度は COVID-19 の感染拡大により減少し,4,718 名(2020 年 5 月 1 日現在)となったが,2018 年度は 5,200 名(2018 年 5 月 1 日現在),2019 年度は 5,499 名(2019 年 5 月 1日現在)と堅調に増加しており,これらの留学生の日本語教育のために,CJL においては200 名のティーチングスタッフが週に約 650 コマの多彩な授業を運営している。しかし,留学生の日本語学習の場は CJL の教室にとどまるものではない。キャンパス内のあらゆる場が学びの場となっており,キャンパス外にも学びのリソースが溢れている。留学生の日本語学習を多面的に捉えるならば,学内と学外,また,学内においても教室内と教室外というように 3 つの場が想定される。留学生は,授業を中心にサークルやアルバイト,ボランティア等,様々な社会活動を通して日本語を学ぶ。それらの総体としての日本語の学びが,留学生の現実の場での日本語運用力の向上に寄与すると考えられる。本稿で取り上げる「わせだ日本語サポート」も,全学的な教育研究機関である CJL の付設機関として,学内の全留学生に対して開かれた教室外の日本語の学びの場の一つである。そこでは 10 年間にわたり,留学生を対象に正課外の日本語自律学習支援が行われてきた。しかし,その認知度は学内他箇所に対しても,留学生に対しても未だ十分ではない。本誌 2018 年第 6 号,および 2019 年第 7 号の「センター最前線」において,CJL の課題として「開放性」が取り上げられたように,「わせだ日本語サポート」においても,更なる「開放性」が求められている。本稿では,開室 10 年目を迎える 2021 年度,学内の全留学生と各箇所に向けてより開かれた日本語自律学習支援機関となることを目指して,「わせだ日本語サポート」の現在とこれからの挑戦について報告する。「わせだ日本語サポート」は,2011 年に CJL 内に開設された日本語自律学習支援機関である。この年,東日本大震災が起こり,来日する留学生が激減した。帰国する留学生も増え,新学期の授業開始が延期されるなか,日本にとどまっている留学生のために日本語学習支援を始めたのがきっかけである。当時は,22 号館 8 階の一室で担当教員と早稲田大―全留学生に開かれた日本語自律学習支援を目指して―1.はじめに2.「わせだ日本語サポート」の設立と目的「わせだ日本語サポート」の挑戦

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