早稲田日本語教育実践研究 第9号
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61実践紹介多賀 三江子早稲田日本語教育実践研究 第 9 号   科目名:会話 1  レベル:初級 1 ・2 /中級 3・4・5 /上級 6・7・8   履修者数:14 名 筆者は,2019 年秋学期,早稲田大学日本語教育研究センターで初級レベル 1 の会話クラスを受け持った。本クラスの使用教科書は,『NIHONGO Breakthrough From survival to ミー,2015)である。筆者は,かねてより日本語の授業は,学習者を能動的に学ばせることが必要であると考えており,アクティブ・ラーニング(以下 A・L)すなわち「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり,学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法」(文部科学省中央審議会 2012)を目指し授業に取り組んでいる(多賀2020)。本稿では,中村他(2005,p. 22)の「ボールでコミュニケーション」に倣い,会話練習がよりアクティブになるよう行った活動について述べる。 中村他は,大学の日本語クラスにおいて,友好的な雰囲気を作ること,また,その中で学習者自身が主体的に参加でき,それを効果的に日本語の習得に結び付けることを目的として,アクティビティを取り入れた教室活動を行っている。そしてその一つとして,「ボールでコミュニケーション」を紹介している。これは,学習者が輪になって,ボールを投げあいながら,自己紹介を行う活動である。このような活動を,中村他は学習者の体と心の緊張をほぐし,リラックスした雰囲気を作るためのアクティビティであると考え,「ほぐすアクティビティ」(p. 17)と名付けている。そして,学習者は「ほぐすアクティビティ」を行うことで,心身ともにほぐれ,さらに学習した日本語を使ってみることで,他者からの関心などを得,自分に自信が持て,楽しく学習を進めることが図れるとしている立って輪になり,Dialogue1 の一部をパートで交代しながら,発話するように促した。例  グリーン:「すみません。これは スペインの ワインですか。」   てんいん:「いいえ,イタリアの ワインです。」(Breakthrough,p. 40)―アクティブ・ラーニングを試みて―1.はじめにcommunication in Japanese』(以下 Breakthrough)(キャプラン株式会社 J プレゼンスアカデ2.実践の方法(p. 12)。筆者はこの活動を『Breakthrough』の Dialogue の会話練習に使用した。例えば,Lesson5 の Dialogue1「At a Wine Shop」(p. 40)では,本文会話等を練習させた後,全員でボールを使った初級レベルの会話授業への取り組み

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