早稲田日本語教育実践研究 第9号
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59図 1 クローバーチャート(参考)木下 直子実践紹介早稲田日本語教育実践研究 第 9 号   科目名:社会人基礎力をつける 5−8  レベル:初級 1・2 /中級 3・4・ 5 /上級 6・7・8  履修者数:33 名(うち,大学院生 8 名) 「社会人基礎力」とは,経済産業省が 2006 年に提唱した「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」を言う(経済産業省 HP)。社会人基礎力には,コミュニケーション能力が重要だと言われており,本科目では「論理性(説得力)」「他者意識」を基本としたコミュニケーション・スキルの向上を目指している。具体的には,大学やインターンシップ先での問題(木下ほか 2015)をもとに,どのようにその問題を解決するか,どのように会話を展開させ,他者を配慮した表現を用いるかについてグループで検討している。また,最終課題の一つに,社会問題に対して説得力のある意見を発表する課題があるが,説得力を高めるために,ロジックツリーやクローバーチャート(図 1)といったシンキング・ツールを活用している。シンキング・ツールをクラスメートに示し,自分の意見とは異なる立場の人が導き出す理由づけをもとに考える活動を行っている。 オンライン教育は,一般的に知識伝達型の学びに適していると考えられているが,計画的に授業をデザインし,仕掛けづくりをしておくことで,学習者間の相互作用を促すような学びの場づくりを試みた。 本稿では,2020 年度春学期に本科目で試みたオンライン授業を紹介するとともに,より活発な学びの場づくりについて検討したい。 本科目は,発表やテストの回を除き,図 2 のような流れでオンライン授業を行った。それは,①リアルタイム配信(Zoom)で授業のねらいやスケジュールを確認した後,〇時△分に Zoom に戻るよう伝える。② Moodle 上のオンデマンド講義の動画を視聴する。動画には各回のテーマと課題があり,一人で課題に取り組む。③決まった時間に Zoom に戻り,制限時間を確認した後,ブレイクアウトルームでグループディスカッションを行う。④メインルームに戻り,グループの見解を説明し,全体で共有する,という流れである。1.授業概要2.授業の流れ オンライン授業における学びの場づくり

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