早稲田日本語教育実践研究 第9号
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□□□□早稲田日本語教育実践研究 第9号/2021/35―42図 1 スキルの境界 Barnett, R (1994) p. 62 より作成名  称③社会人基礎力  (経済産業省,2006『社会人基礎力に関す る 研 究 会「 中 間と り ま と め 」 報 告書』④就職基礎能力  (厚生労働省,2004『若年者就職基礎能力 修 得 の た め の 目安 策 定 委 員 会 報 告書』)統 合 的 な 学 習 経 験 と 創造的思考力前に踏み出す力考え抜く力チームで働く力コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能力職業人意識基礎学力ビジネスマナー資格取得能       力自らが立てた新たな課題を解決する能力主体性働きかけ力実行力課題発見力創造力計画力発信力傾聴力柔軟性情況把握力規律性ストレスコントロール力意思疎通協調性自己表現力責任感向上心・探究心職業意識・勤労観読み書き計算・数学的思考社会人常識基本的なマナー□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□ □ □ □ □ □□ □ □ □ □□□ □□□□□□□□ 38コンピテンシーは人が生きるための基礎的汎用的能力であると考えられ,対象範囲が広い。そこで本稿では,コンピテンシー概念における文脈性に着目し,ビジネス・コンピテンシーを,基礎的汎用的能力を基盤とした上で,それらの能力をビジネスの文脈で使用し,ビジネスの課題解決,および価値の創造ができるコンピテンシーであると考える。つまり,「どのような時代や場所,環境においても,ビジネスの文脈の中で多様な能力を統合的に活用しつつ他者と協働して課題に取り組み,個人と社会の双方の価値を創造し,自己実現を果たしていけるような基礎的汎用的能力」である。コンピテンシーは,職業生活に必要なエンプロイヤビリティと市民生活に必要な市民性の双方に共有される。また,学術世界と労働世界の双方に共有される「移転可能なスキル」(Transferable 働世界のコンピテンスの関係を境界モデルとして示し(図 1),移転可能なスキルを④と規定した。しかし,学術世界と労働世界の双方に跨るコンピテンシーも存在することから,移転可能なスキルとしてのコンピテンシーは,③と④の双方に関わると考えられる。本稿で取り上げるビジネス・キャリアで必□□□□□ □ □ □ □ □ □□□□□ □ □ □□ □□ □ □ □ □□□□□□ □ 4.ビジネス・コンピテンシーと日本語教育skills)でもある。Barnett(1994)は,学術世界と労

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