早稲田日本語教育実践研究 第9号
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32早稲田日本語教育実践研究 第9号/2021/27―33確認できる(早稲田大学日本語教育研究センターホームページ「日本語教育プログラムを知る」)。CJL の「ディプロマ・ポリシー」と「カリキュラム・ポリシー」はその使命の達成を志向したものであり,これらのポリシーに準拠した人材育成,すなわち CJL における教育・支援は以下を志向すべきであると考える。(1)学習者自身が自らの学びを継続させることを可能にする教育・指導(2 )協働学習を通して各々の学習者がお互いの興味を理解し認め合うこと,さらに,共通理解や価値の共有化が促進される教育・指導(3 )教室内外の社会的文脈や状況において発現する学習者一人一人の独自性とその可能性に着目して行われる教育・指導そして CJL には「サポート・ポリシー」が存在する。CJL の学習支援に関する方針であるサポート・ポリシーを具現化するためには,CJL 内外の〈人材〉と〈知財〉をつなげること,そのつながりから,充実した〈リソースの提供〉と〈学びの場づくり〉を実現することが重要である。本稿では,早稲田大学で学ぶ日本語学習者のアカデミック・キャリア支援のためのコース開発における第一歩として実施した文献調査の結果を踏まえ,CJL で学ぶ日本語学習者を対象とした,必要かつ実現可能な教育・支援のあり方について考察を行った。日本語教育で育むキー・コンピテンシーがなぜ重要か。まず,日本語学習者のアカデミック・キャリア形成を支え,各々の自己実現を可能とするからである。次に,未知への挑戦が課題となり,人間の英知が問われる今日の社会において社会と世界に貢献していける人材の輩出につながるからである。さらに,本学における日本語学習者のキャリア教育・支援の目的は,言うまでもなく「新たな知の創出」と「世界に通用する人材の育成」にある。グローバルリーダーが課題解決のプロセスを進めるために起こすべき行動として問題の再認識が挙げられる。解決したい問題や実現したい未来を課題として設定すること,個人や組織において,その問題意識を「ことば」にしていく作業によって他人や他の組織に問題意識を伝えることが可能になる。その結果,互いの誤解やミスコミュニケーション,認識のずれを解消,改善することが可能になる。今後は,これらの理論的枠組みのなかで具体的な科目設計を行い,「CJLから専門教育へ」「Waseda から社会へ,世界へ」と,橋渡しのための日本語教育を実践し,そこで得られた知見を教育現場に還元することに努めたい。付記: 本稿は,2020 年度早稲田大学日本語教育研究センター研究プロジェクト「留学生のアカデミック・キャリアおよびビジネス・キャリア支援のためのコース開発」の研究成果の一部である。参考文献門倉正美(2003)「アカデミック・ジャパニーズとは何か」『日本留学試験とアカデミック・ジャ5.まとめ

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