31ショート・ノート尹智鉉・寅丸真澄/早稲田大学の日本語学習者が育むべき「アカデミック・コンピテンシー」とは何かを受けたことから,リテラシーの重要な側面である「応用力」,「活用力」,「批判的読み」を核に据えた「生きる力」の育成が強調されるようになった。また,知識が社会・経済の発展を駆動する基本的な要素となっている「知識基盤社会」といわれる現代社会においては,知識の急速な進展に伴って生じる様々な変化に対応していくための力量として「幅広い知識・柔軟な思考力・判断力」が不可欠とされている。単なる知識や技能だけでなく,高次の認知能力,パーソナリティや価値観,態度や動機づけなど,人間の全体的な能力を含む「コンピテンシー」が今を生きる力として求められるようになってきた(松下 2010)。また,OECD の最終報告書(2005)では,「人生の成功」と「常に正常に機能する社会」を構築することを目的としたコンピテンシー総体として「キー・コンピテンシー」の概念を定め,三つの広域カテゴリーとそれを構成する 9 つの具体的カテゴリーを示した。詳細は,図 1 の通りである。図 1 キー・コンピテンシー(ライチェン&サルガニク(著),立田慶裕(監訳) 2006)以上のような,世界の高等教育機関をめぐる今日の時代的・社会的要望に応えるべく,早稲田大学は,創立 150 周年へ向けたビジョン(Waseda Vision 150)のなかで,「Vision 1 世界に貢献する高い志を持った学生」「Vision 2 世界の平和と人類の幸福の実現に貢献する研究」「Vision 3 グローバルリーダーとして社会を支える卒業生」を掲げている(早稲田大学ホームページ「Waseda Vision 150 について」)。世界の様々な地域,社会に貢献する人材を輩出し,そのなかで一人一人が自己実現と社会貢献を果たしていくための教育と研究,そのための大学としての役割に関するビジョンを示したものである。これは,OECDキー・コンピテンシーの枠組みと合致し,国際社会の動向とも一致するものである。こうした本学の取り組みにおいて最重要キーワードの一つが国際化であり,留学生教育という側面から本学の国際化の一端を担っているのが CJL である。CJL は本学における日本語教育を一元的に担っている教育機関として,留学生数の増加だけではなく,その内実の多様化を目指している。言い換えると,CJL には人間力・洞察力を備えたグローバルリーダーを育成,輩出するという組織的使命があり,これは CJL の各種ポリシーからも(Organization for Economic Co-operation and Development, 経 済 協 力 開 発 機 構 ) が 定 め た
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