早稲田日本語教育実践研究 第9号
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16早稲田日本語教育実践研究 第9号/2021/11―18に気付き,自信をもつことができたと書いている。 初めての演劇の体験の不安について C は初め少し気まずいと感じたが,だんだん緊張しなくなり自然に演じられるようになった,D は最初,皆の前でパフォーマンスするのは恥ずかしいと感じていたが,気軽にパフォーマンスできるようになった,また皆と一緒にセリフを考えながら演じたことで安心だったと書いている。 「怖がらずに」,「今の自分は気軽にパフォーマンスできます」,「上手く演じることができ」,「可能性に気付き」,「自信を持つこと」というような表現から不安,緊張,自信のなさが解消されたことがうかがわれる。4-2.コミュニケーション,他者を意識する4-2-1.他者に関わることで気付き,学ぶ足の点やどうすれば上手く演じられるかを学べたと述べている。B と C は参加者の構成員によって態度が異なることや性格もそれぞれで,参加者が協力してコミュニケーションをとる重要さに気づいた。E は一人一人の物事の見方や考え方の相違に気づき,出身が異なるクラスメイトと話すのは異文化コミュニケーションしていることだと書いている。 学生は学生同士が議論する過程を観察し,各々の学生が相手や状況によって関わり方を調整していることに気づき,またそれぞれの物事の見方,考え方の相違点や多様性に気づいたと思われる。本授業では学生に事前課題として観察とリサーチすることを課している。例えば電車の中での人々の様子の記述からも他者の見てきたものと自分の見てきたものが異なったり,同じだったりすることで気づくことも多々あるのではないか。また学生は他者とストーリーを共有し,一つのストーリーに作り上げる過程でも着眼点や話し合いの関わり方,他者が使う表現などから学ぶことがあると思われる。4-2-2.分かりやすく伝える 学生は他者を意識して伝えることの重要性に気づいた。A は観衆に分かりやすく伝わるように人間関係やセリフの調整,ストーリー作成の過程で要約力,想像力を学ぶことができたと書いている。B は以前は自分さえわかればいいという考え方で,他の人に分かりやすく伝えることを考えていなかった。演技では何かを表現するのが大事であり,演技をしていない時でも友だちと話す時は自分の考えを分かりやすく表現するようになったと書いている。学生はグループの人,発表を見ている人に分かりやすく伝えることを意識している。そのためにはセリフの述べ方を分かりやすくする必要があり,またストーリーをメンバーに伝える際にも要約したり,言い換えたりする必要があると気づいた。さらに言葉だけではなくジェスチャー,表情などについて工夫することも必要だと気づいた。4-2-3.演劇はコミュニケーション力 演劇というのはコミュニケーションに必要な要素が多く含まれている。私たちが日常行っている他者とのやり取りを客観的に可視化できる場といえるのではないだろうか。演 A と D は良い発表からも問題のある発表からも気づきがあり学べた。例えば自分の不

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