早稲田日本語教育実践研究 第9号
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15ショート・ノート杉山ますよ/演劇的手法を取り入れた授業の可能性を探る交わしたことで自分の不足のことも気づいた。例えば動作や表情,セリフの言い方など,どうすれば自然になるのか,自分のセリフを言う時はどうすれば上手く演じられるのかについても考えるようになった。私は恥ずかしがりやだが,クラスの友達と一緒に演じることで,成長できました。この授業のおかげで,色々な友だちができて,自分の日本語能力もアップしました。そして日本語を気軽に話せるようになりました。3-1-5.自分を発見し,成長した E 恥ずかしがりやで人と交流するのも苦手であり,人前で演技することも考えられない。話す力を伸ばしたいと思っており,この授業を取った。今は非常に力がついたと思う。授業でグループに分かれて模擬会話やゲーム,演劇などをし,その過程でグループの一人一人の物の見方や考え方が違うことがあって,本当に面白いと思う。グループで各国出身のクラスメイトと話すのはこれこそ異文化コミュニケーションをしているのではないだろうか。ドラマの授業というのは演じるだけではなくて,演劇を構成するまで必要となる創造力や発想力を用いていくのが目的であろう。さらにもう一つ必要不可欠な物がある。それは「表現」である。身体活動や言語活動などを用いての表現はコミュニケーションと言い換えることもできる。演劇というのはコミュニケーション能力のアップには共通項が多く含まれていると思う。人と接することが得意でなく,人前で演じることがないが,自己が作り上げる想像力,創造力に満ちた世界にいる役になり,上手く演じることができたことで自分自身の可能性に気付き,自信を持つこと,まず何よりも自分を発見できた。ドラマは身体や言語の表現を用いて,自分と相手との関係を考え,それをつないでいくもので,グループで同時に話をすることを通して他者と関わることで自分を発見し,他者も発見することもできるのだろう。この授業のおかげで自分自身が成長したと思う。 学生がこの授業で気づき学んだこと,変化したことを書いた振り返りレポートから分析を行った。その結果,不安・恥ずかしさ・緊張からの解放やコミュニケーション,チームワークの重要性や協働性,日本語の能力や知識を得たことが観察された。4-1.不安・恥ずかしさ・緊張からの解放    語学力の不安,対人面からくる不安と緊張,演劇という新しい体験への不安という 3 点についてとり挙げられていた。 語学力についての不安を述べていたのは A と B で,彼らは授業を受け始めた時は日本語力に自信がなく,まわりのクラスメイトが上手に日本語を話すのを見て不安やストレスを感じていた。しかし A は知らないうちに自分でもどんどん話せるようになった,B は挑戦し,変化したと書いている。 対人面では B は話すのが苦手だったが,話せるようになり,怖がらずに自分のアイディアをシェアするようになった,E は恥ずかしがりやで,人と交流することさえも苦手だったが,自分が作り上げた作品の役になり,上手く演じることができて,自分自身の可能性4.分析

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