早稲田日本語教育実践研究 第9号
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7センター最前線寅丸真澄・吉田好美/「わせだ日本語サポート」の挑戦援も重視するようになったのである。その結果,来訪者数が飛躍的に増加した。2018 年度は,CJL 所属学生のほか,7 学部 14 研究科 295 名の留学生が利用した。所属別利用者割合は,CJL 所属の日本語教育プログラム(JLP)の留学生が 52% と最も多く,次いで大学院生 27%,学部生 21% の順になっている。来訪者の相談内容としては「書く」(17.4%),「学習方法」(12.6%),「文法」(11.4%),「学習計画」「話す」(9.3%)等の四技能や学習管理に関する相談件数が多かった。翌 2019 年度には,来訪者数が倍増した。CJL 所属学生以外では 7 学部 12 研究科から留学生が訪れ,来訪者総数は 614 名となった。1 日に 10 名前後訪れる日が続くこともあり,2 名,もしくは 3 名のスタッフでは対応しきれないため,ウェイティングボードを準備したこともある。所属別利用者割合は,JLP の留学生が 75% と最も多く,次いで大学院生16%,学部生 9% の順になっている。利用者の相談内容としては「文法」(22.3%),「書く」(19.0%),「話す」(7.8%),「宿題」(7.8%)等が上位を占めている。CJL 科目の履修者の多くは漢字圏の留学生であり,読解や聴解には困らないものの,産出に困難を抱える留学生が多いと考えられる。なお,このような授業に関わる相談のほか,携帯電話の契約書から研究計画書やエントリー・シートの日本語相談に至るまで,実際の相談事項は多岐にわたっている。2020 年度は,来訪者が急増した 2019 年度から一変し,「わせだ日本語サポート」にとっても激動の年であった。COVID-19 の感染拡大により学内全体が授業形態を模索するなか,支援活動を休止するか否か,また,活動を継続するのであればどのようにすべきか,深刻な選択を迫られることになったからである。しかし,終わってみると,オンラインでありながら,スタッフの努力で開催し続けたセミナーやイベントの参加者数は春学期 241 名,秋学期 173 名で計 414 名,来訪者数は春学期 74 名,秋学期は 104 名で計 178 名となった。これは先の見えない状況でも手探りで歩を進めた結果である。CJL の授業開始日が 5 月の連休明けに決まると,それまで待機してもらっていたスタッフに緊急招集をかけ,話し合いを重ねた。筆者らは「わせだ日本語サポート」の運営や作業について,常に関係者全員で議論するようにしており,スタッフの自律的な判断を尊重している。この時も,どのような形態にせよ,現場を担うスタッフの意向に従おうと考えていた。筆者らの懸念を後目に,スタッフ全員が開室の意向を示したため,オンライン・セッションの導入について詳細な検討を行い,授業開始 1 週間後に「オンライン・わせだ日本語サポート」を Zoomで開室した。国内外に散った留学生と,運用が始まったばかりの LMS(Waseda Moodle)や Blackboard イン授業で四苦八苦するなか,CJL のホームページや学内情報システムで紹介されている日本語自律学習支援機関の案内に気づく留学生は少なかった。また,セッションの様子を現実に見てから来室することができない留学生にとって,Zoom での来室はハードルが高いようで,開室当初は来訪者ゼロという日が続いた。5.2020 年度の支援活動と 2021 年度の挑戦Collaborate,Zoom といった Web 会議システムに慣れないティーチングスタッフがオンラ

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