早稲田日本語教育実践研究 第9号
10/100

6早稲田日本語教育実践研究 第9号/2021/3―10期的にリソースの整理を行い,学習リソースの一覧を作成するとともに,それらを全員で共有し,いつでも来訪者に提供できるようにしている。(4)日本語学習のセミナーやイベントの実施「わせだ日本語サポート」では,JLPT(Japanese-Language Proficiency Test)受験を支援する「JLPT 支援セミナー」や,留学生の就職を支援する「キャリア・セミナー」,就職について個別に相談する「キャリア個別相談会」,在学生や修了生から就職や進学の経験談を聞く「SENPAI TALK」等,関係他機関と連携しつつ,留学生に寄り添ったセミナーやイベントを企画・運営している。2019 年にはタンデム学習を企画して 15 組のペアの支援を行った。本企画では,言語学習を介した学生同士の交流機会の創出に成功するとともに,協働でタンデム学習を企画・運営したスタッフにも大きな学びをもたらした 5)。また,2020 年度は一層の開放と充実を図り,それまで行ってきたセミナーやイベントに加え,「ランチタイム・セッション」と「夜祭」を実施した。「ランチタイム・セッション」はスタッフが得意分野をテーマにして昼休みに行うグループ・セッションであり,「夜祭」は専門家に依頼して授業後に開催する特定分野のセミナーである。このようなセミナーやイベントは留学生の日本語学習を動機付け,時には日本語によるキャリア・パスを示す役割も果たしている。アドバイジング・セッション同様,セミナーやイベントにおいても,留学生の日本語学習を長期的,かつ多視点から捉えていると言える。(5)「日本語学習ポートフォリオ」の配付「わせだ日本語サポート」では,自律的で持続可能な日本語学習を計画・促進することを目的として,CJL 所属の JLP の留学生に「日本語学習ポートフォリオ」を配付している。これは留学生が自身の日本語学習の目的を可視化させ,学習計画や進捗状況を書き込む冊子であり,留学生活に関わる学内機関の場所や連絡先等,実用的な情報も記載されている。(6)関係他機関との連携相談事項の中には機関内では対応しきれないものもある。たとえば,国際交流イベントについて知りたい,就職活動について詳しく教えてほしい,研究論文の書き方が知りたいといったものである。また,悩み事があり眠れないといった健康上の訴えもある。このような質問や相談には,異文化交流センター(Intercultural Communication Center, ICC),キャリアセンター,ライティングセンター,保健センター等,学内機関やサービスを紹介している。留学生支援のフロントラインに位置する相談窓口の「ハブ」として,関係他機関と連携を取り,どのような相談に対しても一次相談窓口として応じるようにしている。留学生活全体にわたる,留学生と留学生支援機関をつなぐ役割を担っていると言える。2018 年度秋学期に,広範な留学生により柔軟に寄り添う支援を目指して,アドバイジング・セッションの質と体制を転換した。開室以来,自律性を重視して「教えない」6)日本語学習アドバイジングを実施していたが,留学生の多様化と増加に伴い,誰でも利用できる開かれた教室外学習の場として期待が高まっていた。そこで,自律的な学習者に至る「足場かけ」として来訪者の学習段階を見極めながら,教授も取り入れた日本語自体の支4.留学生の利用実態

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る