早稲田日本語教育実践研究 第8号
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5年度報告年度報告Aさん、学習計画を立て、実施してみる。91初回の来訪1週間後、2 回目の来訪S: 帰国するまでに日本語をどこまで上達させたいですか。A: なるべく、日本語話者に近いレベルがよいと思いますが、どうでしょうか?S: その、日本語話者に近いレベルとは、具体的にどのようなイメージですか。A: 日常会話がスムーズにできるとか、テレビ番組を見てすべてわかるとか、そんなイメージです。S: そういうレベルを目指しているんですね。A: はい。S: 目標に向けて、何か学習計画がありますか。A: あまり考えたことがありません。S: Aさんに合った学習計画を立てることで、やるべきことがはっきりして、時間をより効果的に使うことができますよ。一緒に立ててみませんか。A: 本当ですか。やってみたいです。でも学習計画を立てたことがないんです。S: それなら、一緒に考えていきましょう。日本語を勉強するのに便利なアプリやサイトもたくさんありますよ。例えば……。S: 自分が立てた計画を実行してみて、どうでしたか。A: うまく行ったところも、うまく行かなかったところもあります。S: 詳しく聞かせてもらえませんか。A: 計画があるので、やるべきことがはっきりしていて、この 1 週間を無駄にせず、計画どおりにタスクを実行できたことには達成感があります。また、ここで紹介された「NIHONGO e な」のウェブサイトを使うことで、日本語学習が楽しくなりました。S: それはよかったですね。A: でも、ちょっときついです。S: どんなところが大変だと感じますか。A: 計画を立てて勉強するのは初めてなので、先週はなんとか頑張りましたが、今週は続けられるかどうか……。S: 初めてなので大変だったんですね。大変すぎると感じたら、計画を調整できますよ。A: そうなんですか。ちょっと欲張りすぎたのかもしれません。S: どのように調整できるか、一緒に考えてみましょう。詳細事例① Aさんの事例  修士課程 2 年生。修了後、自分の国で就職する予定。将来、日本語を使うかどうか分からないが、日本語学習を自分自身でデザインするための「日本語学習ポートフォリオ」も用意してあります。スタッフと相談しながら、自分で日本語学習をプロデュースしてみましょう!日本にいる間に日本語を上達させたいと考えて来訪した。S:スタッフ、A:来訪者【問題を掘り下げる】具体的にどのようになりたいのか、スタッフと話しながら明確化していく。【学習計画作成へ導く】限られた時間を有効に使って学習するために、学習計画を立てるという方法があることを紹介する。【リソースを紹介する】必要な情報が得られるリソースにアクセスできるように導く。【振り返りを行う】前回立てた学習計画に基づいて実行してみてどうだったかを確認する。【問題を掘り下げる】うまくいかなかったことについて原因や来訪者の気持ちを把握する。【励まし、調整を促す】来訪者の状況や感情に理解を示し、調整できることを知らせる。

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