早稲田日本語教育実践研究 第8号
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「CJL で学ぶ学習者のためのレベル判定テスト開発」Development of Level Check Test for Students at CJL68早稲田日本語教育実践研究 第8号/2020/67―68研究プロジェクト名(英文名)研究代表者名研究メンバー設置主旨2019 年度活動計画2019 年度活動実績予算額寅丸真澄(日本語教育研究センター)伊藤奈津美(日本語教育研究センター),岩下智彦(同),沖本与子(同),三好裕子(同) 本プロジェクトの目的は,日本語学習者(以下「学習者」)が日本語教育研究センターにおける自身の日本語レベルを把握できるようにするための客観テストを開発することである。本テストの開発,実施により,学習者が多種多様な日本語科目の中から自身のレベルに合った科目を容易に選択できるようになると同時に,学習者の日本語レベルを踏まえた質の高い授業が提供できるようになると考えられる。 本研究では,2018 年度に実施した予備調査の結果をもとに問題の修正を行い,2019 年度に総合科目群の総合日本語入門,総合日本語 1□6 レベル,集中 1□2 レベルの学習者を対象に文法・語彙のレベル判定テストを実施する。また,比較検証のため J-CAT の得点も収集する。分析は,テストの質の検証,およびレベル判定ツールとしての運用を目指した分析の 2 つの観点から行う。まず,問題項目(以下「項目」)の質の検証として,全項目の正答率,点双列相関を算出する。これにより全員が正答または誤答である項目や受験者の能力を弁別していない項目の有無を統計的に検証する。次に,運用を目指した分析として,全受験者の得点分布,および各レベルの受験者の正答率の分布を確認する。また各項目の想定難易度と実際の正答率,正答者分布が想定と一致しているかを検証する。以上により,文法・語彙を始めとする言語知識の観点から測定可能なオンラインレベル判定テストの開発を目指す。 2019 年度春学期は,総合科目群の総合日本語 1□6,集中 1□2 レベルの学習者を対象に文法・語彙のレベル判定テストを実施した。総合日本語 1□2 および集中 1□2 レベルの学習者に対しては 60 問,3□6 レベルの学習者に対しては 90 問の問題セットを使用し,科目登録期間内の第 2 回授業でテストを行った。一方,秋学期においても,総合日本語 1□2,集中 1□2 レベルの学習者を対象に 45 問セット,総合 3□6 レベルの学習者に 90 問セットの文法・語彙のレベル判定テストを実施した。さらに,従来から設置されていた任意の漢字テストを一部変更し,漢字 2□5 レベルの学習者を対象に初回授業で 90 問セットのレベル判定テストを実施した。分析は,まず項目の質の検証として,正答率,点双列相関を算出した。また,各項目の想定難易度と実際の正答率の違いを確認した。その結果,総合日本語 1□6 レベル,および漢字 1□5 レベルの項目難易度の適切性および弁別性が確認できた。次に,運用を目指した分析として,学習者の履修レベル別の得点分布が想定した得点分布と一致しているかを検証した。その結果,レベルに準じた得点分布が確認された。加えて,J-CAT の合計得点と文法・語彙テストの得点間には,高い相関が確認された。これらの結果から,文法・語彙テストと漢字テストの得点が学習者の履修科目選択時のレベル指標として有効に機能することが明らかになった。2,100 千円

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