早稲田日本語教育実践研究 第8号
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3巻頭エッセイリー・マージ/日本語の世界□ □ 4.羽:鳥,ウサギ,鶏無生物1.本:ペン,ボトル2.冊:書籍,雑誌3.部:新聞4.杯:飲み物ここで,ポルトガル語にはない日本語の主語の後につづく助詞「が」と「は」を紹介し,「は」と「が」の違いを説明する。主語助詞の「は」と「が」こそが日本語の論理性を証明する。これは大出晃教授の著名な本「日本語と論理」で述べられた内容でもある。例 1:東京は日本にある。― 主語として内容を強調する時東京がオリンピック開催地に選ばれた。― 主語として東京に限った内容例 2:東京は地下鉄が便利である。「は」と「が」が両方存在する時,主語の範囲が広いのは「は」,特定の主語は「が」になる。イラストが好きなイゲルフェルド教授にベン図で補充説明する。次 は ア メ リ カ の 科 学 史 家 の ト マ ス・ ク ー ン 教 授 が 構 築 し た「 共 約 不 可 能 性可能」というのは異なるパラダイムに属する理論の間には比較できる共通の要素は存在しないとする説である。つまり,ある文化にしか存在しない「文化語彙」は他の言語には不在であることを示す。よって,「文化語彙」は翻訳不可能の面がある。日本語には様々な「文化語彙」がある。特に美学に関連する語彙は他の言語に翻訳することは簡単ではない。日本語での「わび」,「さび」,「もののあはれ」を例として挙げる。「わび」,「さび」は素朴で荒涼とした美しさを表している。「もののあはれ」は気づいていない,つかの間,様々な美しさ,形のない美しさを表現する。こうした美についての語彙を通じて,日本語で現れる自然の美しさ,感覚を認識できる。桜の美しい満開の花を見て,喜びを感じる。 しかし,数日後,その桜がしおれたり,地面に落ちたりしている可能性がある。「もののあはれ」とは文字やある状況から記憶が蘇って,一瞬の感情,感覚が残るのを意味する。その一瞬の時間でしか感じることができない経験でもある。incommensurability」の概念と日本語の語彙についてイゲルフェルド教授に語る。「共約不

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