実践紹介―個と協働のバランス―1.漢字 5 概要2.科目担当者としての配慮のあり方65齋藤 智美早稲田日本語教育実践研究 第 8 号 科目名:漢字 5 レベル:初級 1・2 /中級 3・4・ 5 /上級 6・7・8 履修者数:22 名 漢字 5 は,早稲田大学日本語教育センターの総合科目群に位置付けられる科目であり,コーディネーターの作成したシラバスに沿って複数のクラスが同時進行で開講され,担当者にその運営が任されている。クラス目標として,「中級の漢字の字形,それらを用いた和語や熟語の意味と読み方が分かる」「使い方が分かる中級,中上級語彙を増やし,類義語の使い分けや適切な共起関係が理解できるようになる」「語構成,和語と漢語の対応,反意語,類義語などメタ的な観点から語彙を整理し,未習語の意味や読み方が推測できるようになる」「漢字の読み方を文の中で理解し,音声として聞いた言葉・文を漢字を使って書ける」「辞書やクラスメート,教師の力を借りながら,自力で漢字の知識を増やせるようになる」の 5 つが示されており,INTERMEDIATE KANJI BOOK 漢字 1000plus VOL.1の 6 〜 10 課を用いて進めていく。 総合科目群の漢字科目は 1 から 5 にレベル分けされているが,漢字 5 の履修者は単に漢字の知識があるだけではなく,印象としては上級の日本語能力を有し,相応のやりとりが可能である。ここから考えられるのは,レベル相応に,個々人が漢字学習のスタイルを持っており,課ごとの新出漢字は,ほとんどの履修者にとってある意味で既習であるということである。そこで,クラスとして何が求められるのかという点が浮上する。 これまで漢字の字形や読み方,意味,使い方について,それぞれが自分なりに獲得してきた学習のスタイルがあると考えると,独りで学習可能なこと,あるいは,独りで自分なりにしたほうが効率や方略の点で有効なことがあるはずである。その点をふまえ,クラスという環境を活かした学びとは何か,漢字を学ぶことにクラスがどう資することになるのか,ということを,配慮すべき点として“改めて”考えることとなった。 そこで,担当する漢字 5αのクラスを,協働による学びの場,ペアやグループによる活動によって,やりとりしながらクラス目標に取り組む設計をし,実施した。しかし,初めて担当したクラスの期末に実施された学生授業アンケートの結果,「グループワークが少し多すぎる」「グループ活動の時間はちょっと長すぎてつまらなくなった」という記述が教室で漢字を学ぶということ
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