早稲田日本語教育実践研究 第8号
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早稲田日本語教育実践研究 第8号/2020/63―64 3.今後の課題64表 1 2019 年度春学期 学期予定(抜粋)授業Lesson 1 ②Lesson 2 ①Lesson 2 ② (ふじた ももこ,早稲田大学日本語教育研究センター)小テスト活動冊子を使った活動語彙マップ①提出短作文①教室活動短作文①提出に関するインプットを増やした。具体的には,導入した漢字の使用例を示し,学習者はその漢字語彙を使った例文を書くという練習をピアで実施した。出来上がった例文は板書してもらい,漢字語彙の意味や用法を全体で再度共有することを繰り返し実施した。また,板書している際には,書き方や語形についても個々に指導するように努めた。ピアで実施し,板書された漢字を共有することで,自分では思いつかない漢字語彙の使い方に触れることができ,その結果漢字語彙のインプットとアウトプットの量を増やすことにつながっていた。第 4 週 Lesson 2第 5 週 Lesson 2第 6 週 Lesson 1, 2 復習2-1.活動冊子を中心とした活動 基本的な漢字学習を十分に実施後,翌週はさらに「使う」ことに時間をかけた。前週での「使う」との違いは,学習者自身の文脈で「使う」という点にある。そのために『活動冊子』を活用した。学期予定にあるように,本コースは教科書での指導と『活動冊子』を使用した活動が組み合わされた内容となっている。『活動冊子』では,1)教科書で学習した漢字を使った語彙マップ作成,2)漢字を使った作文,という二つの活動を実施する。語彙マップの作成では,できる限り学習者自身の言葉を紡ぎだしてもらいたいと考えていたが,実際に出来上がった語彙マップは,教室で習った漢字を使うことだけに終始したものであったり,同じようなもの,つまり学習者自身の言葉ではない語彙マップが多く見られた。そこで筆者自身で語彙マップを作り,筆者自身がなぜこの言葉を連想したのかという点を詳しく説明するようにした。また短作文については,毎回数名の作文を紹介した。その結果,語彙マップについては期待するほどの変化は見られなかったが,短作文については短いながらも学習者自身の体験や考えがよくわかる作文が多くみられるようになった。「クラスメイトと内容を共有する」ということが,自身の文脈で漢字を使ってみるという動機付けにつながったと思われる。 15 週を通して,基本的な漢字学習と自分の文脈で漢字を使う活動を繰り返すという流れで実践を実施した。しかし,学習した漢字は使えるが,学習したことのない漢字は使えないという様子も見られた。今後は自律的な漢字学習のストラテジーを獲得するための方向性を,基本的な漢字学習の中でより具体的に示していくことも必要であると考える。

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