早稲田日本語教育実践研究 第8号
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1.はじめに2.授業の概要と流れ63藤田 百子早稲田日本語教育実践研究 第 8 号   科目名:漢字 4  レベル:初級 1・2 /中級 3・ 4 ・5 /上級 6・7・8   履修者数:23 名 平成 26 年度「国語に関する世論調査」の調査によると,日常生活において手書きをする機会が「あまりない」と回答した者は 20.9%,「ない」と回答した者が 6.4% もいるなど,日常生活において「手書き」による「書く」言語行動は減ってきている。留学生の言語行動も,SNS によるやり取りが主流となっており日本語を手で「書く」ことより「打つ」ことのほうが,彼ら自身を表現したい日本語を発信できるかもしれない。しかし,教室活動においては,「手書き」による「書く」が主流であり,担当した漢字クラスでは,テスト,課題などすべて手書きである。一方でこのコースの授業を自ら選択し,履修する学習者は,同レベルだけでも毎学期 100 名以上いる。「手書き」であっても,漢字学習のニーズがあることが推測される。また同レベルの漢字クラスを数年担当していて,「話せるけど書けない」という学習者の履修が年々増加していることを実感する。そして彼らからの「漢字が書けるようになりたい」という声を繰り返し聞いている。そこで,本コースでは,漢字が書けるようになることで,より豊かに自身が表現できるようになるということを,目標の一つに掲げ実践を考えた。なお,本コースは,同一科目,同一シラバスのクラスが複数設置されているコースであり,シラバスや活動課題は科目のコーディネーターが作成していることを先に述べておく。2-1.教科書を中心とした活動 以下は,2019 年度春学期に実施した授業のスケジュールを一部抜粋したものである。授業は以下のように,教科書(『INTERMEDIATE KANJIBOOK 漢字 1000plus VOL.1』凡人社)を使った授業を中心に,小テスト,活動という流れを 15 週間繰り返す。まず,教科書に沿って,テキスト各課の学習目標が達成されるよう漢字の読み書きや用法の確認といった基本的な漢字指導に時間をかけた。本コースは中上級レベルの学習者を対象としているが,先にも述べたように「話せるけど書けない」学習者,「書けるけど話せない」学習者が混在しており,どうやって書き方や読み方,使い方を覚えるのかという漢字学習のストラテジーを獲得している学習者も多くない。そのストラテジーを獲得するためにも,教室での基本的な漢字指導は,その後の「活動冊子を使った活動」を充実させるためには必要な時間であると考える。そして「使える漢字語彙」を増やすために,漢字語彙の用法実践紹介自分を表現するための漢字を増やす

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