早稲田日本語教育実践研究 第8号/2020/61―62 2-2.授業内での独自の活動 筆者のクラスでは,スマホやパソコンを用いる活動も随時行った。例えば,同音の接尾辞が付く語(5 課),同音異義語(5 課)を検索してグループ化する活動や,長い漢字熟語(3 課),漢語の形容詞性と名詞性(4 課)を調べる活動などを行った。活動は 3 〜 4 人のグループで行い,答えを板書発表で全体共有した。活動のねらいは,普段使っているスマホのアプリや学習サイトを共有し,お互いの学習法を学び合うことにある。思い込みによる誤字を他者の目で修正できるのもグループ活動の良さである。活動時の教師の指導は,語彙の意味を文脈で理解することを促すことである。多くの学生は調べる際に,語彙とその語訳だけを知ろうとする傾向にある。しかし,文章の中で漢字を見て,正しい意味と使い方で覚えることの重要性を学習者自身が認識し,習慣化することが大切である。 学生にとって身近で手軽な IT ツールを使った活動は,楽しみながら作業が進み,効率も良かったと感じる。また,活動中には普段より積極的に質問が出たのも良かった点だ。学生は板書発表時に正答が書けることを気にしがちで,それが活動中の質問につながるのだが,質問によって正答へのプロセスを教師とともに考えることができる。この活動の本来の目的は,そのプロセスにある。求める答えをどうやって導き出すかを,教師や仲間とともに授業内で考え,それを自身のものとして体得していくための活動である。 課題に対する教師からの個別 FB は,ピンポイント指導には適するが,別の視点からの気づきを促すことには限界もある。他者のアイデアや成果物から様々な学習方法を学ぶことで自己の学習内容の幅を広げ,自分に合った学習方法を見つけていく。その手助けとして教室活動は有効であると考える。ただ,教室空間と時間の制約からグループメンバーが固定化してしまいがちなため,いかに効率的に全体共有をしていくかは課題でもある。するためには,豊かな漢字知識が必要である。だからこそ,その身近にある便利なツールを利用して,随時,即時,調べる習慣をつけ,少しの学習を気負わず繰り返すことで日常的に語彙力を高めていくのも,実用的な漢字自律学習方法の一つではないかと考える。参考文献加 納 千 恵 子・ 清 水 百 合・ 竹 中 弘 子・ 石 井 恵 理 子・ 阿 久 津 智(2014)『INTERMEDIATE KANJI BOOK 〜漢字 1000PLUS 〜 VOL.1 改訂第 3 版』凡人社川口義一(2016)『もう教科書は怖くない !! 日本語教師のための初級文法・文型 完全「文脈化」・「個人化」アイディアブック第 1 巻』ココ出版3.まとめと今後の課題 IT ツールの発達,普及により,直接文字を書くことは減ってはいるが,正しい変換を62(やました えみこ,早稲田大学日本語教育研究センター)
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