―原稿用紙を使用した書き取り練習―1.はじめに2.授業の概要55実践紹介松浦 康世早稲田日本語教育実践研究 第 8 号 科目名:漢字 3 レベル:初級 1・2 /中級 3 ・4・5 /上級 6・7・8 履修者数:22 名 近年インターネット上では様々な漢字学習アプリが紹介されており,ダウンロードをするだけで誰でも簡単に利用することができる。担当した漢字クラスの中にも既に利用しているという学生が複数いた。しかし,漢字学習アプリはいつでもどこでも学習できるという手軽さが利点である一方,その多くは視覚的あるいは音声的な学習にとどまり,書く練習の機能を持ち合わせていない。 漢字学習の難しさは,小テストや試験における学生の誤答から察することができる。漢字圏の学生は簡体字や繁体字をそのまま書いてしまうことがあり,非漢字圏の学生は漢字の形が正確に書けていないことがある。また,どちらの学生も共通して漢字の読み方に間違いが目立つ。長音や促音などの特殊音や清音・濁音が聞き取れないためである。 これらの問題を解決するには,漢字学習アプリのように漢字を眺めるだけではなく,何度も書いて練習する必要がある。しかし,非漢字圏の学生の中には漢字を書いて覚えるという習慣が身についていない学生もいる。繰り返し書いて練習するように指導するが,見て暗記することに意識を集中させようとする。また,漢字圏の学生の場合も,漢字が書けるからと言って練習を怠るケースがある。本論では,授業内あるいは宿題としていかに漢字を書く回数を増やすかに焦点を当てて実践してきた取組を紹介する。2-1.コースの目標 担当したのは,漢字圏と非漢字圏の両方の学生を含む中級 3 レベルのクラスである。週1 回 90 分× 15 週の授業で,レベルを統括するクラス案内には,到達目標として「初級の漢字を文章の中で理解し,書ける漢字と見てわかる漢字を増やす」ことと「一つ一つの漢字の知識をもとに,漢字熟語の知識を増やす」ことが挙げられている。読むことと書くことの両方の技能が要求されるクラスである。2-2.教材 受講者全員に『KANJI LOOK AND LEARN』の本冊とワークブックを購入させ,授業内書いて覚える習慣をつける
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