―「個人発表」から見えた視点―1.漢字系クラスの授業内容2.漢字系クラスの授業における工夫3.活動で深まる漢字の学び実践紹介53水上 弘子早稲田日本語教育実践研究 第 8 号 科目名:漢字(漢字系)1,漢字(漢字系)2 レベル:初級 1・2 /中級 3・4・5 /上級 6・7・8 履修者数:漢字(漢字系)1 15 名,漢字(漢字系)2 12 名 総合日本語の初級 1・2 レベルに相当する漢字 1 と漢字 2 は,漢字の知識がある漢字圏の学習者を対象とした漢字系と,全く漢字の知識がない非漢字圏の学習者を対象とした非漢字系に分かれている。漢字系クラスの大半は,中国語を母語とする漢字圏出身の学習者であるが,母語ではないが漢字の知識がある学習者も履修する場合がある。 漢字系クラスは,非漢字系クラスと同じく『KANJI LOOK AND LEARN』1)を教科書として用い,同じ課を学習し,課ごとの小テストや中間・期末試験を行っている。 また,授業では日本語の漢字や漢字語彙に対する学びを深めることを目的とした「個人発表」という活動を行い,日常生活で興味を持った漢字語彙を探し,漢字の読み方や意味,興味を持った理由などについて発表する。 漢字系クラスでは,非漢字系クラスが学習する基本漢字や漢字語彙だけでなく,教科書に網羅されている未習を含めたすべての漢字および漢字語彙を学習する。従って,小テストや中間・期末試験においても,非漢字系よりも圧倒的に出題語彙数が多い。 そこで,漢字系クラスの授業では,日本語の漢字の読み方(音読み・訓読み),漢字語彙の意味を説明するだけではなく,中国語の簡体字や繁体字の字形との違いを板書し,日本語の漢字の書き順やストロークとの違いについても詳しく説明している。特に,学習者がこれまで気づきにくい日本語と中国語の字形の違いや同じ漢字でも中国語の意味と日本語の意味の示す範囲が異なる場合などは,PPT に写真やイラストを示し,ビジュアル的に理解できるようにしている。 漢字系 1・2 で行っている「個人発表」は,具体的には,漢字系 1 では学習者が日常生活で見つけた興味ある日本語の漢字語彙を 3 つ選び,それらの漢字が表記されている実物の写真を撮る。そして,なぜその漢字を選んだのか,どうしてその漢字に興味があり,面漢字系漢字クラスの「活動」
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