早稲田日本語教育実践研究 第8号
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注早稲田日本語教育実践研究 第8号/2020/51―52 3.実践の成果と今後の課題52ている。使用の方法は,主に以下の通りであった。まず第 1 回目の授業時に視聴させ,難しい表現や,語彙の説明を行なった。その後も続けて,毎回の授業で視聴させた。1 回の授業は 90 分だが,だいたい中盤の時間帯で気分転換も兼ねて視聴させた。また,初めは視聴させるだけであったが,3 回目の授業から歌詞を見ながら歌うことを勧めた。加えて,新出の部首が出てきたとき,該当する部首を確認させたり,授業の最後に,学習した部首を一人ひとり発表させることなどを行った。 授業では,最初は戸惑っている学習者も見られたが,後半になると,慣れてきて大きな声で積極的に歌う学習者も多く見られた。また,歌の中でキャラクターが踊っているのをまねて踊る学習者も見られ,授業を楽しみ,能動的に参加している様子が感じられた。さらに,新しい漢字を学習する際,「この漢字の部首は歌の中に出て来た」「これはさんずいだから水に関係ある」など,学習者が自発的に部首について発言することも多くあった。これらの様子から,学習した部首を歌でアウトプットすることで,部首をより身近に感じることができ,漢字学習が能動的な学修につながっていくと考えられる。そしてそのことは,A・L の趣旨とも合致していると考えられる。しかし,歌がどのぐらい漢字学習に役に立ったのか,具体的には調査していない。今後は,詳細に調査していきたい。また,この歌は,日本人の小学生向けのものなので,活用の仕方にもより一層の工夫や改善をしていきたい。加えて,歌以外にも,漢字学習での A・L の方法をたくさん模索していきたい。  1) YouTube『部首のうた』の製作者 jun egusa 氏から授業における教室内での『部首のうた』使用,及び本文への掲載は,既に承諾済みである。参考文献坂野永理・池田庸子・品川恭子・田嶋香織・渡嘉敷恭子(2017)『KANJI LOOK AND LEARN』ジャパンタイムズ.文部科学省中央教育審議会(2012)「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて〜生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ〜(答申)用語集」<http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2012/10/04/ 1325048_3.pdf > (2019 年 12 月 30 日閲覧) jun egusa(2011)『 部 首 の う た 』 < https://youtu.be/J9m7ceI7gqU > (2019 年 12 月 30 日閲覧)(たが さえこ,早稲田大学日本語教育研究センター)

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