―YouTube『部首のうた』を活用して―1.はじめに2.実践の方法51実践紹介多賀 三江子早稲田日本語教育実践研究 第 8 号 科目名:漢字(非漢字系)2 レベル:初級 1・ 2 /中級 3・4・5 /上級 6・7・8 履修者数:11 名 早稲田大学日本語研究センターでの漢字のクラスは,漢字圏と非漢字圏の二つに分かれている。筆者は,2018 年秋学期及び 2019 年春学期に漢字(非漢字系)2 レベルを担当した。漢字学習は,非漢字圏の学習者にとって,負担が大きいものと思われるので,従来行われているような,教師主導の授業ではなく,学習者を能動的に学ばせることが必要であると考え,アクティブ・ラ−ニング(以下 A・L)すなわち「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり,学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」(文部科学省中央審議会 2012)を目指し授業に取り組んだ。授業の中では,日本人の小学生のために作成された YouTube の『部首のうた』(egusa 2011)1)を活用し「見る」「聞く」「歌う」の活動を取り入れた授業を行った。この活動により,以下の 4 つの効果が期待できる。①漢字や部首に親しみを持ち,楽しく学ぶことができる。②漢字が部首を含むパ−ツで構成されていることを意識付けできる。③部首の名前を記憶しやすくすることができる。④新しい漢字を学習するとき,部首に着目することで,その漢字がどのような意味か想像でき,教師の説明時,理解が深まる。本稿ではこの取り組みについて紹介する。 『部首のうた』は,部首一つひとつを,アニメーションで,軽快な歌とともに表している。例えば「すむ,そば,からだ,ひとつながりでにんべん」という歌詞とともに,「住む,側,体」という漢字が出現する。この動画を視聴することで,学習者は,視覚と聴覚の両方で部首に関するインプットを受ける。さらに,インプットされた部首と漢字を,歌うことでアウトプットさせることもできる。 漢字(非漢字系)2 のスケジュールは,毎回 90 分の授業で,『KANJI LOOK AND LEARN』(坂野ほか 2017)の 11 課から 20 課までを,1 課(16 字)ごとに進めていくものである。当該授業で扱う漢字は,全部で 160 字である。『部首のうた』(egusa 同上)で扱われている部首は39 個であるが,そのうちの 25 個の部首が,このクラスで扱う漢字 160 字中の 63 字に含まれアクティブ・ラーニングを試みた漢字授業の取り組み
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