見注早稲田日本語教育実践研究 第8号/2020/47―48 □□□□□□□□□□ □ □□□□□□□□□□□□ □ □□□□□□□□□□□3.話し合いの経過4.学生の気づき表 1 学生が収集してきた例(やまだ きょうこ,早稲田大学日本語教育研究センター)ひらがなで表された例カタカナで表された例ローマ字で表された例常用と異なるルビがふられた漢字語の例 学おとく こころ でんき de ラッキー おどり まるちたいけんオトク ウマれかわる ガクタビ ジョーシキ バツグンMIRAI NIHON GEISHA ENPAKU Cawaii uta 園 王国 田中 魂 観光 地 光48景 共演 外 話し合い 1 回目では,「ひらがなが使われるのは外国人のため」,「カタカナは強調のため」という意見が多数でる。ところが,回を重ねて事例を見ていくうちに「お得」のように「おとく」,「おトク」と 3 つの表記とも使われているものや,「リンゴ」や「ケータイ」などカタカナが強調のためだけに使われていないという事例に気づく。さらに,ひらがなやカタカナで書いてある語は,一見では意味がわからないこと,逆に漢字で書いてある語は一目で意味がわかることを体感していくようである。そのため,あえて一字では意味を持たないひらがな,カタカナ,ローマ字を利用することで,読み手に考えさせる効果があるという分析もでていた 1)。また,ひらがな,カタカナの起源から,デザインに注目し「ひらがな=丸くてやわらかい,カタカナ=シャープでかっこいい」という結果を導きだしたグループもあった 2)。漢字のルビについては,非常に自由につけられており,漢字語の意味を広げる役割をしていることに新鮮な驚きを感じている漢字圏の学生もいた。 最終レポートを見ると,多くの学生が,今までこのような表記について学習してきていないことがわかった。メディアにおける漢字の使われ方は日本語の微妙な感覚の上に決められているという深い分析もあった。本課題には,正解はないものの「ひらがな表記=子どもや外国人のため」,「カタカナ語=外来語」という思い込みを捨てることができればいいと考える。また,そこから漢字は一目で意味が分かるという日常はあまり意識しないことに気づいてもらうことも狙いである。漢字は苦手という非漢字圏の学生からは,「ひらがな,カタカナだけで十分だと思っていたが,かえって読みにくいことがわかった。意味がある漢字の方がわかりやすい。もっと漢字を勉強したい。」という意見もあった。 1)かな一字で意味を持つ語をのぞく。 2) 奥垣内(2010)に,ひらがなは,曲線が多く,柔らかい字体,カタカナ語表記のイメージは「外国・冷たい・気取った・モダン・おしゃれ・鋭角的」とある。参考文献奥垣内 健(2010)「カタカナ表記語の意味についての一考察一身体性とイメージの観点から『言語科学論集』16, 79-92.
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