実践紹介1.本科目の目的2.クラスの特徴と活動への影響KANJI BOOK 基本漢字 500 vol.1』(凡人社,2015)を使用しているが,漢字の成り立ちの3.授業の概要と活動例45菊池 富美子早稲田日本語教育実践研究 第 8 号 科目名:考える漢字・話す漢字 1-2 レベル:初級 1・2 /中級 3・4・5 /上級 6・7・8 履修者数:約 25 名 本科目は早稲田大学日本語教育センターの開講するテーマ科目の 1 つである。テーマ科目において,学生は,言語技能を向上させるだけでなく,自身の思考力や創造力を活かして,総合的・協働的活動に取り組むことが求められる。本科目は,初級の漢字,漢字語彙の読み書きを習得するとともに,ペアワークやプレゼンテーションを通して,他者と話し協力しながら学ぶプロセスを重視した授業である。 学生の人数は約 25 名で,日本語学習歴はゼロから 1 年程度の者が多い。非漢字圏,漢字圏,韓国,日系の学生が混在し,レベル 3 以上の学生が復習のために受講することもあるため,学生の背景とレベルはさまざまである。授業では主教材として『新版 BASIC 話,パーツや部首の話,語彙の練習,書き練習は,一部の学生には情報性が薄く,また一部の学生には過度に負荷がかかってしまうことがある。一方,カードタスク,音読,読解,プレゼンテーションなど,ペアまたはグループで話しながら行う読み・創作ベースの活動は,各自が得意な面を発揮しやすく,相互学習が成り立ちやすい。 教室は,机が教壇に向かって平行に,壁までいっぱいに設置されているため,席を移動して活動するのは難しい。ペンなどの文具類は十分な数を借りて使用することができる。 授業は全 15 回で,前述のテキストを 2 課ずつ進めて約 250 字を学習する。定期試験が2 回あり,成績は試験が 20%で平常点が 80%である。 毎回の授業は,大まかに,(1)前回の課のクイズ,(2)ペア,グループ,全体での新しい課の練習,(3)プリントを用いた自習,(4)応用のペアワーク,プレゼンテーション,レクチャーなど,(5)まとめ,という流れで構成される。 本科目で行っている話す活動の例を,3 つ紹介したい。1 つ目は,第 2 週の授業で行う「日中の漢字の違い探し」である。これは,以前,筑波大学の加納千恵子氏の講演で紹介されたタスクで,「着着着着着着着着着着」のように,日本の字体の中に 1 つだけ混じっ話す活動を取り入れた初級漢字の授業
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