早稲田日本語教育実践研究 第8号
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2.調査方法14早稲田日本語教育実践研究 第8号/2020/13―28た教師を養成しているのかを検討しなければならない。今,多様なフィールドに対応する日本語教育人材の育成はどのようにおこなわれているのであろうか。多様な背景を持つ学習者と日々接している日本語教師は彼らの生活に直結する政策・施策にも熟知している必要があり,それが日本語教師養成・研修にどのように反映されてきたかも検証しなければならない。そこで,日本語教師養成・研修の言説がどのような変遷を経てきたのかを日本語教育に関連のある政策・施策と照らし合わせながら検証し,そこから今後必要とされる養成・研修のあり方を考察するための基礎資料とすることを目的として本研究を行うこととした。本稿では,日本語教育機関や団体に所属する教員を含め,日本語学習者に直接日本語を指導する職業ならびに同職業についている人材を指して日本語教師と定義した。また,政府や政党が施政上の方針や方策を指すことを政策,その政策を実行することを施策と定義した。2.1 調査方法調査手順は,次のとおりである。ⅰ  『日本語教育』1 号から 157 号の全論文の中で,タイトル・キーワードの中に,養成・研修に関連のある「教師」「教員」「研修」「養成」「教育実習」「受講生」「政策」「施策」「教育」が入っているものを選出した。1 号から 57 号まではキーワードの記載がないため,タイトルのみから選出した。ⅱ  選出した論文の内容から,日本語教師養成・研修の目標とあるべき姿が明確に書かれた論文を調査し,養成に言及したもの,研修に言及したもの,養成・研修両方に言及したものに分類した。ⅲ  日本語教育に関係する政策・施策について,田尻(2009)を基に年表を作成し,ⅱで分類された論文から日本語教師養成・研修についての論者の理念が明確に書かれた記述を抽出して時系列に並べ,照らし合わせた。ⅳ 上記ⅲで作成した年表から,言説がどのように変化したか考察を行った。今回『日本語教育』を調査対象としたのは,この学会誌が 1962 年に刊行され,その後継続的に日本語教育の問題点を明らかにしてきた定期刊行物であり,それぞれの時代に発表された政策・施策に関連する論文も数多く載っているからである。それらを俯瞰することで,日本語教師の養成・研修に関する流れを見ることが出来るのではないかと考えた。2.2 調査結果『日本語教育』1 号から 157 号までに掲載された論文は,全部で 1648 本あった。そのうち,タイトル・キーワードの中に「教師」「教員」「研修」「養成」「教育実習」「受講生」「政策」「施策」「教育」が入っているものが 779 本あった。この中から,日本語教師養成・研修に関する言説が明確に書かれた論文は 38 本あった。(表 1,表 2)

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