早稲田日本語教育実践研究 第8号
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―政策・施策に照らして―要旨1.問題意識13論文藤原 恵美・王 晶・加藤 真実子・倉数 綾子・小林 北洋・髙木 萌・松本 弘美早稲田日本語教育実践研究 第 8 号  本研究は,『日本語教育』(1 〜 157 号)に掲載された論文の中から,日本語教師養成・研修について論じられている論文を選定し,言説がどのように変化していったかを考察したものである。そして,それら言説を日本語教育に関連のある政策・施策と照らし合わせながら,時代ごとに整理した。その結果,養成・研修に関する言説は,1970代は知識重視型教師の育成,1980 年代は学習者の多様化に対応した教師の育成,1990年代は「自己研修型教師」の育成,2000 年代は協働できる教師の育成,そして 2010 年代以降は社会性のある教師の育成に及んで論じられ,拡張していることがわかった。  キーワード:日本語教師,養成・研修,言説,政策・施策2018 年 12 月 8 日,外国人材受け入れ拡大を主な目的とする入管難民法改正案が,与党などの賛成多数により可決,成立し,2019 年 4 月 1 日から施行されている。同法には新たな在留資格である「特定技能」の創設等が盛り込まれている。これまでは日本では医者や弁護士などの高度な専門性を持つ人材のみ就労を認められており,専門性を必要としない単純労働を目的とした就労は認められていなかった。しかし,この新制度によってこれまで単純労働と考えられていた分野においても,必要なスキルや日本語能力があると認められれば就労が可能になる。今回新たに創設されるこの在留資格により,在留外国人の急増が予想されている。それに伴い,日本語教育の充実を求める声が高まっている。これは今回の「特定技能」に限ったことではない。例えば,EPA 経済連携協定が締結され,在留資格「特定活動」が認められた際にも,介護・看護分野における日本語教育の充実が求められた。このように,外国人の在留に関する政策・施策が打ち出されると,それに対応した日本語教育人材が求められる。そして今課題の一つとなっているのが日本語教師の不足と教育の質の確保である。それには教師のなり手を増やす努力をすることに加え,今現在教師として活躍している教師が日本語業界を離れずに働き続けようと思える環境づくりが必要である。また,教師の資質・能力を高める努力,及び,その資質・能力を一定以上に保つための環境が不可欠である。一度,教師になれば終わりではなく,教師になったあとも絶えず教師は学びながら成長し続ける必要がある。それには継続的な研修が必要であり,新人の養成でも現場にあっ『日本語教育』から見る日本語教師養成・研修に関する言説の変遷

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