早稲田日本語教育実践研究 第7号
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「わせだ日本語サポート」では、早稲田大学の院生であるスタッフが、留学生の日本語学習サポートを行っています。日本語学習にかかわる相談をもって来訪する留学生と向き合い、また、ミーティングや勉強会を重ねながら、それぞれが多くの気づきや学びを得ており、それを次のサポートに活かしています。わせだ日本語サポートでは、「来訪者」が悩みを話しながら答えを求めて、「スタッフ」が解決方法をアドバイスするという役割的な意識が普段だと思いました。しかし、実際にスタッフとして関わっていて、その意識が 少しずつ変わってきました。 来訪者は必ずしも相手に答えを求めるわけではないし、スタッフは必ずしも答えや知識を持っているわけではありません。または、スタッフはその答えや知識を持っているとしても、必ずしも来訪者に合うとは限りません。セッションにおいて、両者は対話しながら一緒に考えることで様々な可能性が生まれてくるのではないかと思います。来訪者自身の中からもその「答え・解決方法」が考えられるようになる可能性もあります。わせサポでの活動を通じ、「自律的な学びに対する支援」の「自律」とは何か、を考え始めました。来訪する学生の話を伺うたびに、私だったらこうするだろう、こうした方がいいのではないか、といった想いが頭をよぎり、私だったら、という形でお話をしたこともあります。ですが、それは「私だったら」の仮定、さらには私にとって最適な解決策であり、その枠を超えることはありません。自律というのは、アドバイスや問いを投げかけたことで育つものなのか、これに対する答えはまだ出ていません。ですが、ここで学んだのは「話を聞く準備ができていること」が何よりも大事だということ。学生が話している時に与えてくれる情報は話している内容だけではありませんでした。仕草・表情・話すトーンやスピード、様々な情報が、彼/彼女が今どのような状況にいてどのようなことに悩んでいるのか、表していました。来期は、「話を聞くこと」と「アドバイス」をつなげ自律とは何か、という問いに私なりの答えが出せたらと思っております。私が「ワセサポ」のスタッフとして最初に学んだことは、来訪者である日本語学習者らの質問に対して、ただ「答える」、「喋る」のではなく、学習者の希望を尊重した上で、その質問の背景に、何を求めているか、何を目指しているかを理解することが極めて重要だということです。来訪者によって質問がかなり異なっていますが、日本語とより多く関わりたく、日本語を通して自己実現を求めていることはみんな共通しています。ワセサポでは、多様な日本語学習者と接する機会がたくさんあります。学習者一人ひとりの声を聞きながら、同じ目線から日本語学習の悩みについて話し、考えていくことができました。一緒に考えていくうちに、コミュニケーション能力やアドバイジング力などが身につきました。このような経験は「ワセサポ」でしかできないものだと思っています。93年度報告年度報告11F.D. さんY.O. さんZ. N. さん

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