て早稲田日本語教育実践研究 第7号/2019/49―94これまでの「サポート」経験をとおし、大きく二つの気づきがありました。一つは、学習者が抱える問題は、単に日本語に関する問題というわけではなく、様々な問題が複合的に絡み合っているという気づきです。もう一つは、日本語の教室は多くの日本語学習リソースの一つに過ぎないという気づきです。私は日本語教師です。現在も、日本語教師をしながら、「サポート」のスタッフを務めています。かつての私は、学習者が抱える日本語の問題や自身が担当する日本語の教室にばかり注目していました。しかし、「サポート」に関わるようになって、学習者はそれぞれ複雑、かつ多様な内実を抱えながら、自身の目的に応じ、多種多様なリソースを自律的に選択する存在であると考えられるようになりました。このような学習者へのまなざしの変化が、日本語教師である私にとって大きな学びとなっています。わせサポではコミュニケーションの基本を学んだ。語学のサポートにおいて、日本語の問題もあるが、(来訪者の)学生は何の目的で来訪したかを整理した形で言えないことが多い。そしていろいろな角度から質問をし、話していくことで徐々にそれが明らかになっていく。このように何かを問題としているが、はっきりと具体的に言語化できないこと、さらに漠然と誰かに相談をすることで徐々に問題が明確になっていくことは語学以外の分野でもよくおきる。質問をすれば隠されていた問題や動機の源泉が出て来るのではなく、人は人に聞いてもらい話し、理解されることで自分がすべきことに確信を持ち、行動を起こす。そしてまた、はっきりとはしない問題にぶつかり、考え、ときには相談し次の方向を見出す。考えてみれば当たり前であるが、このような簡単には割り切れない人の在り方を理解しておくことは、日常、人とのコミュニケーションにおいて活きると思う。半期間と大変短い間でしたが、「わせだ日本語サポート」のスタッフとして様々な業務をやらせていただき大変勉強になりました。日本語教育の分野が専門ではないので、日本語の文法の説明などはあまり得意ではなかったのですが、もっと日本人の友達がほしい、サークルに入りたいなどの日本での交流を希望する留学生の背中を後押しできる仕事はとても楽しかったです。また、今までティーチングの経験はいくらかありましたが、アドバイジングは全然違う仕事なので、そういった意味でも新しい体験をさせていただき感謝しております。わせサポで学んだことを卒業後も毎日学校現場で日本語を学ぶ生徒達に接する際に活かしていきたいと思います。92「 わ せ だ 日 本 語 サ ポ ー ト」での経験を振り返っ……スタッフの 学び ……10N.F. さんN.T. さんH.K. さん
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